年金制度の正しい理解促す/よしだ事務所 吉田 啓子
社会保険労務士として開業登録してから、かなりの年数が経った。社労士の業務内容は、企業における採用から退職までの労働・社会保険に関する諸問題、年金相談と広範囲にわたる。その中でも私は、ここ10年くらい、主に年金相談業務に携わっている。
公的年金制度は複雑で難しい。改正が繰り返され、そのたびに経過措置や例外措置が多数設けられ、さらに複雑になっている。
私は、街角の年金相談センターや年金事務所で年金相談員をしているが、説明する側が正確に理解していないと、お客様に納得していただくことはできない。あやふやな知識ではお客様を不安にしてしまう。「年金は難しいですね」と言われたときは、次回は説明方法を変えてみようと工夫する。「よく分かりました」という言葉をいただくと、とても嬉しい。
年金の知識は、顧問先でも、とても役に立つ。まもなく年金の受給開始年齢に到達する従業員の方から、次のような相談を受けることがある。
「年金の請求書が届いたけれど、年金を受給できるのは65歳からなので、その前に請求をしてしまうと年金額が減額されてしまう」「働いていると年金額がかなり減額されると先輩から聞いた」。
現在は、老齢厚生年金の受給開始年齢の引上げ段階にあり、要件を満たす場合は、65歳に到達する前に特別支給の老齢厚生年金の支給が開始される。65歳から受け取れる老齢基礎年金や老齢厚生年金には繰下げ制度があるが、特別支給の老齢厚生年金にはなく、両者を混同しているようだ。
また、年金の受給開始年齢は、生年月日や性別などによって異なる。在職支給停止額の計算に用いる基本月額や総報酬月額相当額も人それぞれで、「先輩の話」が本人に当てはまるとは限らない。令和4年の年金制度改正により、65歳未満の在職老齢年金制度は支給停止基準額が引き上げられ、高在老と同じ基準とする見直しが行われている。
高年齢者雇用安定法の改正により、70歳までの就業確保措置が事業主の努力義務となった。さらに、被用者保険の適用拡大により、今後、年金を受給しながら厚生年金保険の被保険者として就労する従業員はさらに増加する。
被用者保険に加入するメリットは大きい。また、公的年金には「老齢年金」だけでなく、「障害年金」や「遺族年金」もある。
労務管理のサポートはもちろん、年金相談の経験を生かし、公的年金制度の仕組みや制度について正確な情報を発信し、それぞれの働き方や老後プランの選択肢を広げる手伝いを行っていきたい。
よしだ事務所 吉田 啓子【千葉】
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