【主張】転籍制限緩和と処遇改善

2024.02.22 【主張】
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 政府は、開発途上国への技能移転を目的とした外国人技能実習制度を廃止し、「育成就労制度」を創設する方針を決めた(=関連記事)。技能実習制度で原則3年間認めていなかった他社への転籍について、新制度では、人権保護と労働者としての権利性の向上の観点から、一定の条件下で可能にする。

 就労期間が、分野ごとに1~2年の範囲内で設定した期間を超えるなどの要件を満たした場合に、転籍を認める方向だ。ただ、2年の場合は現行制度から大きく緩和するとは言い難い。労働者の権利として転籍のしやすさを担保しつつ、受入れ企業に対し、外国人人材が定着するような魅力ある職場環境づくりを促すことが重要ではないか。

 技能実習制度では、長時間労働や賃金不払い残業といった厳しい労働環境などが原因で、実習先から失踪する外国人が後を絶たない。

 法務省によると、令和3年に7167人だった失踪者数は、4年には9006人に増加。技能実習生に占める割合も、1.8%から2.0%に拡大している。他社での就労を促すブローカーが仲介し、不法就労につながっているケースも珍しくない。

 育成就労制度では、技能実習制度でも認められている「やむを得ない事情がある場合」の転籍について、その範囲が拡大・明確化される。たとえば、契約上の労働条件と実態に一定の相違がある場合は、改善状況などを考慮しつつ、「やむを得ない事情がある場合」の対象にすることを明示するという。

 また、転籍には当分の間、民間職業紹介事業者の関与を認めず、育成就労制度の監理団体(監理支援機関)が中心となって転籍支援を行う。ハローワークが支援する際は、外国人技能実習機構から改組する外国人育成就労機構と連携して実施する。

 さらに転籍ブローカーを排除するため、転籍の仲介状況に関する情報を把握できる体制も整えるとした。不法就労助長罪の法定刑を引き上げ、取り締まりも強化する。

 転籍制限が緩和されることで市場原理が働き、適正な労働条件の確保に近付くことを期待したい。

令和6年2月26日第3438号2面 掲載
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