【主張】人材確保へ課題洗出しを
中小企業の人手不足が深刻化するなか、厚生労働省が人材採用と定着に成功している企業の事例集を作成した。取組み内容を、事業戦略の転換、業務見直し、職場環境の整備、採用活動の工夫の4つの区分に整理し、紹介している。
大企業に比べて経営資源が乏しい中小企業が、すべての区分の対策を講じるのは難しい。効率的に成果を上げるためにも、自社の人材確保・定着面の課題を着実に洗い出したうえで、取り組む内容を適切に選択したい。
日本商工会議所が中小企業を対象に今年1月に実施したアンケート調査によると、人手不足を訴える企業が3分の2を占めた。対応方法(複数回答)をみると、「非正社員を含む採用活動の強化」が81%で最も多く、「事業のスリム化、無駄の排除、外注の活用」(39.1%)や「デジタル・機械・ロボットの活用」(27%)などを引き離している。省力化などによる生産性向上の取組みもみられるものの、新規採用を軸に人手不足に対処しようとしている姿勢がうかがえる。
中小企業の人材確保を後押しするために厚労省が作成した事例集では、取組み内容を4つの区分に整理しただけでなく、企業の悩み・課題別に、参照とすべき事例を示した。
採用に関する悩みのうち、「休日・労働時間などの条件が求職者のニーズと合っていない」については、週3日休館日制を導入して年間休日150日以上を確保したホテル宿泊業などを紹介。「自社のPRの仕方が分からない」という悩みを抱えていたパソコン等販売・リース業では、自社の就業環境や魅力が求職者に伝わるよう、社内で議論を重ね、求人票やホームページの記載内容を工夫している。
定着面については、「柔軟な働き方ができない」、「身体的負荷が大きい」、「従業員の成長やキャリアアップを支援できていない」、「経営層の考えが伝わらない」などの悩みに応じた事例を提示している。
採用しても人材がなかなか定着しない企業は、従業員アンケートの実施などを通じて自社の課題を抽出しておけば、事例集の取組みをより活かせるだろう。