【主張】中小もベア3%が視野に
連合の賃上げ集計によれば、3月末時点の賃上げ総額は平均で1万6000円に達し、率でも5%以上を維持ししている。ベースアップを含む改善分は3.6%を超え、昨年の物価上昇率(生鮮食品を除く総合指数=3.1%増)を上回った。価格転嫁の進捗が懸念された中小規模においても、賃上げ総額は1万2000円強、4.69%と健闘している。
一方、3月末に公表された賃金構造基本統計調査からは、昨年も中・小企業で着実に処遇改善が行われていたことがうかがえる。1000人以上の大企業では前年比0.7%減と低調だったのに比べ、100~999人の中企業では2.8%増、100人未満の小企業では3.3%増と改善した。30歳代後半から50歳代前半にかけて落ち込んだ大企業に対し、中・小企業では全年齢階級でプラスとなり、一部の階級を除き総じて2%以上伸びている。
こうした結果をみれば、日銀が集中回答日からまもなく方針転換を明らかにしたのも頷ける。賃上げ交渉の回答は、大手が口火を切り、系列企業や中小へ広がっていくため、賃上げ集計は回を追うごとに漸減する。満額回答が相次ぐさなかでの意思表明は、例年であれば当意即妙だったに違いない。
ところが今春のこれまでの様相は、例年の枠に収まっていない。第1回集計で2.98%だった300人未満のベア率は、第2回で3.15%、第3回では3.21%にまで上昇した。昨年は同じ期間で0.1ポイント低下していたことを思えば、今春の勢いは目覚ましい。この傾向が今後も続くとは思えないが、最終集計でベアが3%を超えることも十分予想される。
中小組合が8割を占める機械・金属の産別JAMの3月末集計では、300人未満のベアが7000円台となり、大手労組とは小さくない格差が付いている。ただ、一つひとつを見ていけば3分の1には5桁の数字が並び、まれに2000円台、3000円台が現れる。中小企業においても賃上げ額に数倍の差が生じている現実は、見誤らないようにしたい。