【助成金の解説】早期再就職支援等助成金(早期雇入れ支援コース)/岡 佳伸
大幅改正、成長企業への労働移動を支援!
失業の無い労働移動の実現を目的として、再就職援助計画等対象者、特定受給資格者等を無期雇用(正社員等)として雇入れる企業に助成されます。コロナ禍は終了しましたが業績が回復しない企業、企業整備により離職した労働者も多数います。雇用調整助成金による雇用の維持から労働政策の流れが成長分野や成長企業への労働移動に重点が移っていく中で注目される助成金です。企業買収や事業譲渡の際にも活用できる助成金と言えます。
概要
早期再就職支援等助成金は再就職支援コース、雇入れ支援コース、中途採用拡大コースの3つのコースが設けています。雇入れ支援コースは「再就職援助計画」もしくは「求職活動支援書」の対象者または「雇用保険の特定受給資格者」を、離職日の翌日から3か月以内に期間の定めのない労働契約を締結する労働者として雇い入れたうえで、雇入れ前の賃金と比して5%以上上昇させた場合や、その雇い入れた方に対して職業訓練を実施した事業主に対して助成を行います。離職を余儀なくされる方の早期再就職および定着の支援を目的としています。
早期雇入れ支援として離職した労働者を離職の日から3か月以内に雇い入れた事業主に対して助成と人材育成支援として早期雇入れ支援の対象となる労働者に対してOff-JTのみ、またはOff-JTおよびOJTを行った事業主に対して追加助成します。
支給額
受給のポイント
① 再就職援助計画対象労働者や特定受給資格者であれば、どのような就職経路でも対象になります。離職前に内定が出ていても構いません。
② 特定受給資格以外を雇入れる場合は直前の離職企業で「再就職援助計画」または「求職活動支援書」の申請公布手続きを行っている必要があります。再就職援助計画の詳細については厚生労働省リンクをご確認下さい。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000106113.html
③ 期間の定めの無い労働者であれば、正社員で雇用しなくても構いません。社会保険加入基準に満たない労働者の場合は社会保険に加入していなくても助成金の対象になります。
④ 雇入れに関する助成金のため、雇入れ後の前後6か月間に喪失原因3となる離職者(解雇や退職勧奨による退職)を出していないこと等の要件があります。
⑤ 令和6年度から「離職前の毎月決まって支払われる賃金」から「再就職後の毎月決まって支払われる賃金」が5%以上上がっていないと対象にならない要件が出来ました。
⑥ グループ企業や親子会社間のいわゆる密接な関係のある企業からの転籍、雇用等は対象になりません。また、事業譲渡等を受けた手続きの際に離職を経ない場合(例えば雇用保険の適用事業所の新旧実態届を出した場合)は対象外になります。
⑦ 人材育成支援に関する助成は、OFF—JT(いわゆる座学)以外にOJTに関する訓練も対象になります。人材開発支援助成金の各コースよりも高額な助成となります。
⑧ 令和6年度から会社都合等で離職して失業保険を受給している人(基本手当の特定受給資格者)も対象になりました。特定理由離職者等は対象外になります。
⑨ 雇入れ支援コースの対象となる「再就職援助計画等対象労働者」や「特定受給資格者」を優先的に雇入れたい等の相談がある場合は、求人を出しているハローワーク等にご相談下さい。
お勧めポイント
失業無く労働移動を目指すための助成金です。離職前にあらかじめ雇用の予約があった場合や正社員雇用をいきなり行っても対象になります。離職前の事業主が再就職援助計画等の作成をしている条件があるため注意が必要です。令和6年度から特定受給資格者も対象に拡大されました。今後、事業譲渡や整理解雇、退職勧奨等を行うとする事業主に関与する社労士にとっては、再就職援助計画等を離職前に作成することが必須と言えます(再就職援助計画対象者は、一定の条件を満たすと常用就職支度手当の対象になる等の労働者本人のメリットもあります)。
相談先
各労働局、ハローワーク
支給申請までの流れ
筆者:岡 佳伸(特定社会保険労務士 社会保険労務士法人岡佳伸事務所代表)
大手人材派遣会社などで人事労務を担当した後に、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険給付業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として活躍。
日経新聞、女性セブン等に取材記事掲載及びNHKあさイチ出演(2020年12月21日)、キャリアコンサルタント
【webサイトはこちら】
https://oka-sr.jp