【主張】制度周知し介護離職防げ
介護休業制度の個別周知の義務化などを盛り込んだ改正育児介護休業法が、5月31日に公布された。
来年4月から、家族の介護に直面した労働者がその旨を申し出てきた場合、自社の両立支援制度を個別に周知し、利用の意向確認を行うことをすべての事業主に義務付ける。40歳到達時など、介護に直面するよりも早い段階で情報を提供することや、相談窓口設置などによる雇用環境の整備も義務化する。労働者が支援制度を活用しないまま、仕事との両立をあきらめて離職してしまう事態を防ぐのが狙いだ。
厚生労働省の委託調査(令和3年)によると、介護離職者のうち、職場で両立支援制度に関する個別の周知が行われていたら、仕事を継続できたと考えている人は5割を超える。法改正に基づく取組みが企業に浸透すれば、介護離職の防止に一定の効果が期待できるだろう。
総務省の就業構造基本調査(令和4年)によれば、家族の介護・看護を理由とした離職者は年間10.6万人に上る。介護の当事者となるのは主に45歳以降の働き盛り世代で、企業の中核を担う立場にあることも少なくない。そうした人材が離職してしまえば経営への影響は大きい。
現行の両立支援制度には、介護休業や介護休暇のほか、所定外労働の免除、時間外労働の制限および深夜業の制限、事業主による選択的措置(短時間勤務など)がある。だが、前出の委託調査によると、介護休業や介護休暇などの存在を知らず、離職に至っている労働者が少なくない。こうした実態を踏まえれば、利用できる支援制度について、介護に直面した際や、それよりも早い時期に分かりやすく伝えることが重要だ。
同調査では、両立支援の必要性が確認できた労働者に対し、自社の支援制度を個別に説明・紹介している企業割合が、労働者1001人以上の企業では7割を超える。一方、51~100人企業では3割程度に留まるなど、個別に周知している中小企業は少数派だ。法改正を受け、中小企業でも労働者への周知が徹底されることを期待したい。