【主張】動き出す「三位一体」改革
政府は、今年の骨太方針の原案と、新しい資本主義の実行計画の改訂案を明らかにした。いずれもデフレからの完全脱却に向け、構造的な賃金引上げをめざす「三位一体の労働市場改革」の加速を謳う。
三位一体の労働市場改革の指針が策定されてから1年余りの間に、リスキリングの促進を目的に雇用調整助成金の見直しが行われ、運用が始まっている。能力向上支援と労働移動の円滑化を図る雇用保険法の改正も行われた。原案などでは、今夏にジョブ型人事に関する「指針」を公表することも明記しており、いよいよ「三位一体」とする施策が動き出す。今後は、検討段階にある施策の早期実現と、始動した取組みの効果の把握を並行して進める必要があるだろう。
①リスキリングによる能力向上支援、②個々の企業の実態に応じた職務給の導入、③成長分野への労働移動の円滑化――の3つで構成する同改革は、構造的な賃上げを実現し、同一職務における日本・外国企業間の賃金格差を縮小させることをめざしている。
能力向上支援については、今年の通常国会で成立した改正雇用保険法において、教育訓練給付の最大給付率の引上げや、訓練期間中の生活を支えるための新たな給付金の創設を定めた。給付率引上げは今年10月、給付金創設は来年10月に施行する。さらに、来年4月以降、離職日からさかのぼって1年以内に教育訓練を行った場合に、自己都合離職であっても給付制限なく基本手当を受けられるようにする。リスキリングの促進と労働移動の円滑化を狙う。
リスキリングについては、産学連携の下、最先端の知識や戦略的思考を身に着けるプログラムの創設もめざす。同改革の指針において、昨年中に「多様なモデル」を示すとしていたジョブ型人事に関しては、いよいよ今夏に多様な事例を掲載した「ジョブ型人事指針」を公表し、企業各社が実情に応じた導入方法を検討できるようにするという。
ようやく出そろう「三位一体」の施策について、政府においては、利用促進のみならず、運用状況の確認と効果の分析が求められよう。