【助成金の解説】両立支援等助成金(柔軟な働き方選択制度等支援コース)/岡 佳伸
小学校就学前までの子育てのための柔軟な働き方を支援
両立支援等助成金(柔軟な働き方選択制度等支援コース)は、小学校就学前までの育児を行う労働者が柔軟な働き方を選択できる制度の利用支援を目的としています。具体的には、以下の要件を満たす事業主が対象となります。
1.育児を行う労働者の柔軟な働き方を選択できる制度(以下、柔軟な働き方選択制度等)を導入する。
2.「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」により、柔軟な働き方に関する制度の利用及び利用後のキャリア形成を円滑にすることを社内で周知する。
3.助成金の対象労働者(制度利用者)と面談を実施し、「面談シート」に記録する。
4.面談結果を踏まえ、制度利用者の「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」を作成する。
5.開始から6カ月間で柔軟な働き方を可能とする制度を、基準以上利用する。
(利用基準回数)
受給額
助成額は、柔軟な働き方選択制度等を2つ導入し、対象労働者が制度を利用した場合には20万円、3つ以上導入し、対象労働者が制度を利用した場合には25万円となります。ただし、1年度あたり1事業主5人までが対象となります。
助成金の目的
小学校就学前まで子供の育児を行う労働者の柔軟な働き方を可能とする制度を複数導入し、制度を利用した労働者に対する支援を行った場合に助成するものです。
受給のポイント
① 制度利用は対象の子の3歳以上で小学校就学前までの期間で設けることとなりますが、通常3歳未満の子を対象とする育児も対象とする制度を導入することになります。ただし、利用実績として短時間勤務制度は対象になりません。
② 2または3以上の制度を導入して利用実績が一定数必要となりますが、利用実績は一つの制度でも可になります。
③ 利用実績の判定は既に利用していると見なされる場合があり注意が必要です
・管理監督者等(法41条対象)、裁量労働制、高度プロフェッショナル労働制適用者は、保育サービス手配・利用料補助のみ対象
・フレックスタイム制はプラン策定時にフレックスタイム制適用者は対象外
・育児のためのテレワークは制度利用開始前の1カ月間において、通算5回以上または所定労働日数の2割以上の期間のテレワーク等を行っていないことおよび業務日報等で始業、終業時刻を把握していることが必要になります。
お勧めポイント
利用実績が6カ月間で一定以上必要なため、利用実績を得ることが難しいと言えます。導入および利用実績を図り易い制度は育児目的休暇(子の養育を容易にするための休暇制度)または子の看護休暇ですが、年10日以上の有給休暇制度導入および合計20時間以上の利用実績が必要になります。
相談先
各労働局
支給申請までの流れ
申請手続き
各種制度就業規則規定例
第●条(育児のためのフレックスタイム制度)
1 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員は、申し出ることにより、フレックスタイム制の適用を受けることができる。
2 前項によりフレックスタイム制が適用される従業員の始業および終業の時刻については、従業員の自主的決定に委ねるものとする。ただし、始業時刻につき従業員の自主的決定に委ねる時間帯は、午前●時から午前●時まで、終業時刻につき従業員の自主的決定に委ねる時間帯は、午後●時から午後●時までの間とする。
(コアタイムを設ける場合は3が必要)
3 午前●時から午後●時までの間(正午から午後1時までの休憩時間を除く。)については、所属長の承認のないかぎり、所定の労働に従事しなければならない。
4 清算期間は1箇月間とし、毎月●日を起算日とする。
5 清算期間中に労働すべき総労働時間は、●時間とする。
6 標準となる1日の労働時間は、●時間とする。
7 申出をしようとする者は、1回につき、1年以内の期間について、制度の適用を開始しようとする日及び終了しようとする日を明らかにして、原則として適用開始予定日の1カ月前までに、育児フレックスタイム申出書(社内様式◯)により●●課に申し出なければならない。申出書が提出されたときは、会社は速やかに申出者に対し、育児フレックスタイム通知書(社内様式◯)を交付する。その他適用のための手続等については、第●条から第●条までの規定(育児休業に係る手続)を準用する。
8 本制度の適用を受ける間の給与及び賞与については、通常の勤務をしているものとし減額しない。
9 定期昇給及び退職金の算定に当たっては、本制度の適用を受ける期間は通常の勤務をしているものとみなす。
※なお、フレックスタイム制の実施には、対象となる労働者の範囲、清算期間、清算期間における起算日、清算期間における総労働時間、標準となる1日の労働時間、コアタイム、フレキシブルタイムについて、労使協定により定めることが必要です。
第●条(育児のための時差出勤の制度)
1 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員は、申し出ることにより、就業規則第◯条の始業及び終業の時刻について、以下のように変更することができる。
・通常勤務=午前9時始業、午後5時終業
・時差出勤A=午前7時始業、午後5時終業
・時差出勤B=午前8時始業、午後6時終業
・時差出勤C=午前10時始業、午後7時終業
※始業・終業時刻を1時間以上繰り上げまたは繰り下げする制度が対象です。
2 申出をしようとする者は、1回につき、1年以内の期間について、制度の適用を開始しようとする日及び終了しようとする日並びに時差出勤Aから時差出勤Cのいずれに変更するかを明らかにして、原則として適用開始予定日の1か月前までに、育児時差出勤申出書(社内様式◯)により●●課に申し出なければならない。申出書が提出されたときは、会社は速やかに申出者に対し、育児時差出勤取扱通知書(社内様式◯)を交付する。その他適用のための手続等については、第●条から第●条までの規定(育児休業に係る手続)を準用する。
3 本制度の適用を受ける間の給与及び賞与については、通常の勤務をしているものとし減額しない。
4 定期昇給及び退職金の算定に当たっては、本制度の適用を受ける期間は通常の勤務をしているものとみなす。
第●条(育児のためのテレワーク)
1 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員は、本人の希望によりテレワークを行うことができる。
2 テレワークの実施場所は、従業員の自宅、その他自宅に準じる場所(会社の認めた場所に限る。)とする。
3 テレワークを行う者は、原則として勤務予定の2営業日前までに、テレワーク申出書(社内様式◯)により所属長に申し出を行い、許可を得なければならない。
4 テレワーク中の給与及び賞与については、通常の勤務をしているものとし減額しない。
5 定期昇給及び退職金の算定に当たっては、テレワーク中の期間は通常の勤務をしているものとみなす。
第●条(育児短時間勤務)
1 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員は、申し出ることにより、就業規則第◯条の所定労働時間について、以下のように変更することができる。
・所定労働時間を午前8時から午後4時まで、または午前9時から午後5時まで(うち休憩時間は午前12時から午後1時までの1時間とする。)の7時間とする(1歳に満たない子を育てる女性従業員は更に別途30分ずつ2回の育児時間を請求することができる。)
・所定労働時間を午前9時から午後4時まで(うち休憩時間は、午前12時から午後1時までの1時間とする。)の6時間とする(1歳に満たない子を育てる女性従業員は更に別途30分ずつ2回の育児時間を請求することができる。)。
2 本条第1項にかかわらず、日雇従業員及び1日の所定労働時間が6時間以下である従業員からの育児短時間勤務の申出は拒むことができる。
3 申出をしようとする者は、1回につき、1か月以上1年以内の期間について、短縮を開始しようとする日及び短縮を終了しようとする日を明らかにして、原則として、短縮開始予定日の1か月前までに、育児短時間勤務申出書(社内様式●)により人事部労務課に申し出なければならない。申出書が提出されたときは、会社は速やかに申出者に対し、育児短時間勤務取扱通知書(社内様式●)を交付する。
4 本制度の適用を受ける間の給与については、別途定める給与規定に基づく労務提供のなかった時間分に相当する額を控除した基本給と諸手当の全額を支給する。
5 賞与については、その算定対象期間に本制度の適用を受ける期間がある場合においては、短縮した時間に対応する賞与は支給しない。
6 定期昇給及び退職金の算定に当たっては、本制度の適用を受ける期間は通常の勤務をしているものとみなす。
第●条(保育サービスの手配および費用補助)
1 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員は、当該子について、会社が手配する臨時的・一時的な保育サービス(ベビーシッター、一時預かり、家事支援サービス等)を利用することができる。
2 保育サービスの利用を希望する者は、所定の方法により、事前にサービス提供事業者に直接申込みを行うものとする。
3 前項のサービスの利用に要した費用については、そのうち5割を会社が負担する。
第●条(子の養育を容易にするための休暇制度)
1 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員は、子の養育を行うために、就業規則第◯条に規定する年次有給休暇とは別に、1年間につき10日を限度として、子の養育を容易にするための休暇を取得することができる。この場合の1年間とは、4月1日から翌年3月31日までの期間とする。
2 子の養育を容易にするための休暇は、時間単位で取得することができる。この場合、始業時刻から連続せず、かつ終業時刻まで連続しない形で取得することができる。
3 取得しようとする者は、原則として、子の養育を容易にするための休暇申出書(社内様式●)により事前に●●課に申し出るものとする。
4 本制度の適用を受ける間については、有給とする。
第●条(子の看護休暇)
※本助成金の対象となる「法を上回る子の看護休暇」に関する規定例です
1 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員(日雇従業員を除く)は、負傷し、又は疾病にかかった当該子の世話をするために、又は当該子に予防接種や健康診断を受けさせるために、就業規則第◯条に規定する年次有給休暇とは別に、1年間につき10日を限度として、子の看護休暇を取得することができる。この場合の1年間とは、4月1日から翌年3月31日までの期間とする。
2 子の看護休暇は、時間単位で取得することができる。この場合、始業時刻から連続せず、かつ終業時刻まで連続しない形で取得することができる。
3 取得しようとする者は、原則として、子の看護休暇申出書(社内様式●)により事前に●●課に申し出るものとする。
4 本制度の適用を受ける間については、有給とする。
育児に係る柔軟な働き方支援プラン制度周知規定例
会社は、育児を行う労働者の柔軟な働き方に関する制度の利用及び制度利用後のキャリア形成を円滑にすることを支援するために、当該労働者ごとに「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」を作成し、同プランに基づく措置を実施する。同プランは、利用予定の制度の内容、円滑な制度利用のための制度利用期間中の業務体制の検討に関する取組及び制度利用後のキャリア形成を円滑にするための措置を含むものとし、制度利用を希望する労働者との面談により把握したニーズに合わせて定め、これを実施する。
※上記就業規則規定例は厚生労働省「両立支援等助成金支給申請の手引き(2024(令和6)年度版)」によります。
筆者:岡 佳伸(特定社会保険労務士 社会保険労務士法人岡佳伸事務所代表)
大手人材派遣会社などで人事労務を担当した後に、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険給付業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として活躍。
日経新聞、女性セブン等に取材記事掲載及びNHKあさイチ出演(2020年12月21日)、キャリアコンサルタント
【webサイトはこちら】
https://oka-sr.jp