【主張】中小の賃金差公表は尚早

2024.07.25 【主張】
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 男女間賃金差異の公表義務が、中小企業の一部まで拡大される可能性が出てきた。令和7年度末で失効する女性活躍推進法の取扱いなどを検討している厚生労働省の検討会が、このほどまとめた報告書の素案で提言した(参考記事=男女間賃金差異 101人以上へ公表義務拡大 検討会が報告書案 厚労省)。一般事業主行動計画の策定などを義務付ける同法に関しては、10年間延長すべきとしている。

 101~300人規模といえば、新卒定期採用に取り組んでいない企業も多い。人事賃金制度は概ね100人を境に整備される傾向にあるとはいえ、もっぱら欠員補充のために採用を行う企業には、定期昇給を前提に賃金表を運用し切るのは困難だ。業種・業態によっても女性比率に大きな差があるなか、男女の平均賃金差がどれだけ女性活躍推進度を示し、求職者の参考になるのか。義務化となると、時期尚早の感が否めない。

 検討会の素案ではその点、ヒアリング結果や厚労省公表の企業事例を踏まえ、「男女間賃金差異の公表に取り組んだ企業においては社内外での評価の向上等の効果が実感されている」とする。4年度から一般事業主行動計画の策定義務が同規模(101~300人)まで拡大されたことを踏まえ、取組みの効果、とくに女性の登用や就業継続の進捗を測る観点から、有効な指標となり得るとしている。

 ただ、素案の参考資料として示されたデータ群をみると、「(同法のための)施策に取り組んだことにより、採用で人材が集まるようになったか」との設問に対し、そう思うと答えた企業は18.5%に留まる(ややそう思うを含む)。そう思わないが約3割を占め、どちらともいえないは5割を超えている。

 同規模においては、課長以上への昇進希望を持つ女性の割合も高くない。行動計画策定済み企業に限れば、30~99人が57.1%、300人以上が44.1%なのに対し、101~299人は37.8%――というJILPTの調査も紹介している。多くの中小企業の本音は、男女を問わず「自社の管理職をめざす若手を獲得したい」であり、知りたいのは賃金差公表がそれにどうプラスに作用するかだろう。

令和6年8月5日第3459号2面 掲載
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