【ひのみやぐら】低い位置でも作業時は油断なく

2024.08.09 【ひのみやぐら】
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 「1mは一命取る」という言葉。安全担当者なら、必ずと言っていいくらい聞き覚えがあるだろう。日本人男性の平均身長が170cmとすると、高さ1mの場所なら頭部の位置は2m70cm。もし、この高さからバランスを崩して墜落し、頭部を強打したとすると十分に致命的な災害になる。つまり、低い場所でも決して油断してはならないという戒めだ。

 1mでも重篤な災害につながるどころか、今号の「安全衛生眺めてみれば」によると、35cmの位置で死亡災害が起きていたというのには、正直驚愕した。人間の頭蓋骨はカボチャと同じ硬さといわれているが、落ちた場所の床面に弾性がなければありえないことではない。1mどころではなく、東内さんの指摘するように「床より高い作業は、全て高所作業」というのはもっともといえる。

 人間の心理として、比較的低い場所は安心して気が緩む傾向がある。したがって、安全担当者はどんな高さでも油断することがないよう、繰り返し教育することが重要になる。近年は現場に高年齢労働者が少なくない。職場に慣れ、経験が豊富であると高齢者は危険を軽視する心理に陥りやすくなる。慣れによる安易な動作や手順を面倒に感じて、手を抜く近道行動などは油断に通じる。ベテランであればこそ、気を引き締めて作業に当たるように指示したい。

 一方、若年労働者については「危険意識の欠如」「現場ルールや作業手順の無視」など無知や未熟練が要因となる不安全行動を起こしやすい。ルール、作業手順の順守はもとより、「危険感受性」を高めるといった視点での教育を早い段階から行う。こうした指導により、安全意識をしっかりと定着させていくことが重要になる。

 近年、脚立、可搬式作業台、はしごなどで低い箇所からの墜落転落災害が少なくない。とりわけ、脚立は手軽に使えるとして、作業中に危険を感じながら使用している者はあまりいないだろう。このため、管理監督者は「正しく使わないと危ない道具」という認識を持たせる必要がある。

 低い場所でも緊張感を持って、油断することなく作業を行うよう指導したい。

2024年8月15日第2456号 掲載
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