“偶然性”が作るキャリア/メンタルサポートろうむ 代表 李 怜香
1999年に社労士として開業し、25年が過ぎた。
社労士事務所での勤務経験もなく、総務としてもアシスタント的な仕事しかしたことがなく、知り合いもだれもいない宇都宮市で開業という、ないないづくしの無謀ともいえる行動だった。ここまで続けてこられたのは、自分自身の興味関心を追求していたら、知らず知らずに時代の流れに乗っていたという面が大きいと思う。
当初は、とくに大きな志もなく、手続きや給与計算が正確にできて、お客様に信頼される社労士でありたいというだけであった。小学生と1歳の2人の子供の母として、子育てや家事との両立に悪戦苦闘していた。
転機となったのは、2011年、メンタルヘルスの分野に興味を持ち、産業カウンセラーの資格を取ったことだった。とはいえ、養成講座に通い、カウンセリングの勉強をしていたころは、自分の興味の赴くまま勉強したというだけで、とくに仕事に活かせるとは考えていなかった。
また、同時期にハラスメント防止コンサルタントの資格も取ったが、たまたまそのころ依頼された講演のテーマが「ハラスメント防止」であり、その準備をするなかでそのような資格があることを知り、せっかく講演のために勉強したのだから受けてみようか、という程度の考えだった。
それがいまでは、手続きや助成金など、社労士の資格が必要な業務はほとんどやらず、メンタルヘルスやコミュニケーションに関する企業研修や、ハラスメント外部相談窓口、ハラスメント事案の調査が仕事の中心となっている。
いまでこそ、ダイバーシティ&インクルージョンが企業経営の大きな課題となり、サポートする社労士も人権に関するアドバイスができる必要があるが、10年以上前に、ビジネスに人権感覚が必要だと意識している人はわずかではなかっただろうか。在日韓国人三世として生まれ、自分自身が民族的マイノリティーであるということから、人権問題には若いころから関心があり、自分なりに勉強していたが、それが現在の仕事のバックボーンになっている。
時代の変化と自身の関心が偶然にも合致し、独自の専門性を築くことができたのは、幸運だった。プランド・ハップンスタンス理論(計画された偶然性理論)が示すように、興味に従い、予期せぬ機会を活かし、柔軟に適応することで、当初は想像もしなかったキャリアパスを歩むこととなった。
社会の変化と個人の関心が交差する点に、新たな可能性が生まれることを実感している。
メンタルサポートろうむ 代表 李 怜香【栃木】
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