楽しい仕事を提供しよう/安藤社会保険労務士事務所 代表 安藤 政明
私が子供のころ、60歳はお爺ちゃん・お婆ちゃんで、70歳といえばかなりの老人というイメージだった。現在70歳の世代が生まれた昭和30年の平均寿命は、男性63.6歳、女性67.7歳。70歳を古稀と名付けたのは大昔のことだろうが、昭和に入ってもなお本当に古稀だったのである。それが今や、70歳以降も働くという者が約4割を占めるという。背景に、平均寿命の大幅な伸びがある。
法律上の雇用確保義務は65歳まで。それ以降70歳までは、就業機会確保の努力義務となっている。努力義務だから確保できなくても罰せられることはない。70歳以降については現時点で法律上の定めはない。そのため、事業所はあえて65歳以上の者を雇用する必要性はまったくない。だが、人手は足りない。65歳未満の者だけで人材確保できなければ、65歳定年を迎えた者も有効な人材となり得る。そのため、65歳以上の雇用が拡大してきているのが実態である。
労働者の立場から将来、不安に感じることがある。報道によると、「生活資金など経済面の不安」と「健康面の不安」がそれぞれ約7割。これらの不安は端的にいえば「長生きリスク」である。長生きして経済的に大丈夫だろうか。健康でいられるだろうか。長生きリスクを背景に、働けるうちは働いておきたいという機運が盛り上がっている。
労働人口が縮小する時代にあって、高齢者の就業意欲が高いことは大歓迎である。しかし、懸念すべき点がある。日経新聞の調査によると、将来に備えて、長く働くための技能向上に取り組む人はわずか14%。しかも平成30年の調査開始以来横ばいで、まったく高まる気配がない。「働き続けたいが、働くための努力はしない」という実態が浮かび上がるのである。それでも労働人口が縮小すれば、事業所は猫の手も借りたいとなるわけだ。日本全体では、①労働人口の縮小に伴い売り手市場になる、②労働者は努力しなくても雇用されるから努力しない、③労働者の能力も縮小、④日本の国際的地位のさらなる低下――という負のスパイラルがみえてくる。
日本社会は努力しても報われない。根底に「みんな一律」的な社会主義的思想があるからである。報われない努力はしたくない。無駄な努力もしたくない。その結果、みんな一緒に落ちるところまで落ちていく。これで良いわけがない。
どうやれば努力するだろうか。結局は、仕事が面白くて楽しければ努力するつもりがなくても熱中する。このような仕事を創出していくことが、今後の事業所運営の鍵になるだろう。その障害となるのは、人間の飽きっぽさだろう。
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