【主張】最賃格差改善は中賃審で

2024.08.29 【主張】
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 地方最低賃金審議会の答申がほぼ出揃った。約半数の都道府県で目安どおり50円増となるなか、他の地域では1~9円を積み増している。多数のパートタイム労働者を雇用する企業にとっては、今年も悩ましい秋がやってくる。

 最賃の低い地域ほど引上げ額が高くなる傾向は、今年も全く変わらなかった。中央最低賃金審議会がA~Cランクの区別なく一律50円の目安を示したのに対し、“上乗せ”が実施された地域はいずれもBないしCランクに属する。他方でAランクの1都1府4県は、いずれも50円増となっている。

 従来は上位ランクほど高い目安額が設定されてきたが、近年は地域間格差を縮小すべきとの議論も高まってきた。今回、全国一律の目安額に決まった過程でも、同じ50円増なら現行の最賃額が低いほど引上げ率は高くなる……との理由付けもなされていた。実際に人手不足を助長しかねない現象として、越境し、より最賃の高い隣県で働く学生アルバイトやパートタイマーもみられる。

 たとえば、静岡の現在の最低賃金は984円だが、隣の神奈川は1112円と128円も高い。県境に接する静岡・熱海市などから“出稼ぎ”に行く人材がいるのは、当然だろう。一方でそうした人材流出を抑止するため、最賃の金額差を埋めるべきと考えることも、理解できる。

 今回、47都道府県で最も高い上げ幅(59円増)となったのは愛媛で、現在の最賃897円は一気に956円まで高まる。引上げ率は6.58%に及び、全国加重平均に対する目安額50円の引上げ率=4.98%を大幅に上回った。引上げ率では最低となる東京(4.49%)との差は、実に2ポイントを超える。最低賃金法が定める「生計費」や「通常の事業の賃金支払い能力」の伸びに関し、そこまでの差があったとは到底思えない。

 最賃改定が実質的に募集賃金引上げの強制となる以上、各地域の判断でここまでの差が生じるのはいかがなものか。仮に地域間格差縮小や全国一律化をめざすのなら、まずは全国レベルでその意思決定をしてもらいたい。

令和6年9月2日第3463号2面 掲載
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