【主張】目を疑った引上げ額84円

2024.09.05 【主張】
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 今年度の地域別最低賃金を巡って8月29日に徳島の地方審議会が結審し、すべての都道府県で答申が出揃った。

 ランク制のBランク、Cランクの地域で引上げ目安である50円を上回る答申が相次ぐなか、後藤田正純知事が複数回にわたって審議会へ大幅な賃上げを要請した徳島では、目安を34円も上回る84円を答申した。引上げ率は、9.38%に達している。最賃決定の3要素の1つである企業の賃金支払い能力に見合っているかどうか疑問が残る。

 今年度は、隣県などとの人材獲得競争の激化を背景に、徳島のほか岩手や佐賀など、議論に先駆けて県知事らが大幅な引上げを要請するケースがめだった。来年度以降、今回の徳島を参考に、審議会への要請をさらに強める地域が続発する可能性もある。だが、最賃の決定は、あくまで最賃法に基づく3要素(生計費、賃金、賃金支払い能力)を考慮してランク別に提示された目安を参酌しつつ、地域での経済・雇用動向のデータを見極めて行うべきだ。

 中賃審は昨年、目安制度に関する協議会を設置し、地域の経済情勢などによって全国を区分するランク制の見直しを行った。地域間格差の是正などを目的に4ランク制から3ランク制に変更。改めて、都道府県ごとに企業経営状況や給与、所得・消費などに関する直近5年間のデータを指数化し、総合的な指数が高い地域から順にA~Cランクに振り分けた。

 引上げ目安「全ランク50円」は、こうして振り分けたランクごとに3要素に関するデータを見極めて提示されたものだ。地方審議会においては、この目安を参考にしながら、地域のデータを踏まえて労使が話し合って引上げ額を決めるのが基本で、人材獲得を意識するあまり、賃金支払い能力を度外視して大幅な引上げ額とするのは、最賃法に基づく最賃決定の原則に反する。仮に地方行政が最賃決定に関与し、経済実態に見合わない引上げが乱発されるなら、目安制度は成り立たない。

 地域間格差の解消を加速させるのであれば、やはり全国レベルで意思決定をすべきだろう。

令和6年9月9日第3464号2面 掲載
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