【人材ビジネス交差点】「対話力」欠かせぬ時代に/㈱ジェイック 執行役員 竹田 裕彦
日本のマネジメント手法がいま、転換点を迎えている。
あらゆる事柄において未来を見通しにくいVUCA(ブーカ)時代。グローバル化やテクノロジーの革新、新しい働き方の登場など、ビジネス環境においては日々さまざまな変化が起こり、企業のピープルマネジメントのあり方もこれまでの「管理・統制型」から「共創型」に変わりつつあると感じている。
正解のない時代には過去の成功体験は通用せず、トップダウンによるマネジメントから、部下の強みを引き出し、対話を重んじるボトムアップによる価値創造へと、我われ自身の行動変容とリスキリングが求められている。
今年5月に世界有数のマネジメントトレーニングを主宰する米国デール・カーネギー社のジョー・ハートCEOが来日し、弊社主催の特別講演を行った。
デール・カーネギー(1888-1955)は日本でも『人を動かす』の名著で知られるが、ニューヨークのYMCAで「対人関係」を教えるトレーニングを始めたのは1912年。今から112年前のことである。
その歴史を引き継いでいるジョー・ハートCEOは、生成AIなどの新しいテクノロジーの誕生や発展が米国で好機か脅威かなど、さまざまな議論を巻き起こしている状況を紹介。そのうえで、「AI時代のマネジメントに本当に必要なスキルは?」という問いに対し、「大事なのは、相手の観点から物事を見ること。自分の意見や判断に支配されて質問をすることを忘れてしまってはいけない。命令は簡単だが、人を育成したいのであれば、聴くことから始めなければいけない。『これについてどう思うか?』と相手に提案権や決定権を持たせる。そういう傾聴力がとても重要で、効果的な対話をするために欠かせない」と指摘した。
さらに、「結局のところ、技術的な成功も、後継者を育てることも、すべて人と人の関係に基づくものである。だからこそ、リーダーには人間関係を構築するスキルがなければいけないし、一人ひとりがそういったことに取り組む必要がある」と続けた。
テクノロジーの進歩によって、働き方や市場は大きく変化を遂げているが、ピープルマネジメントは最終的には人と人の関係に根差しているものであり、その根底には「対話力」が重要だということである。
部下一人ひとりに寄り添うコミュニケーションがチームの信頼関係を築き、意識疎通を促し、組織のエンゲージメント向上につながるならば、管理職の学び直し(リスキリング)における中心テーマになるに違いない。
筆者:㈱ジェイック 執行役員 竹田 裕彦【東京】
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