【主張】労災保険加入は限定的に
今年11月からフリーランス(=特定受託事業者)が労災保険の特別加入の対象になるのに合わせ、連合は「連合フリーランス労災保険センター」を設立した。本紙9月9日付5面によると、組織化も視野に入れて加入促進に取り組んでいくという。労働組合法上、労働者性が認められる余地はあるだけに、同センターの加入者数がどこまで伸びるのか、注目される。
ひとまとめにフリーランスといっても、副業として業務を請け負うケースもある。最新の就業構造基本調査(令和4年)では、「本業がフリーランス」と答えた者は209万人(有業者の3.1%)だった。連合の加盟組合員数が約700万人であることを思えば、決して小さな数字ではない。これまでにもフリーランス向けに共済制度を立ち上げるなど、連合では支援の取組みを続けてきた。
ただ、今回対象になるのは特定フリーランス事業に限られ、すでに特別加入が可能な建設業の一人親方、個人貨物運送事業者、ITフリーランスなどは含まれない。そもそも業種別に設定される労災保険率のバラツキ(1000分の2.5~88)からも明らかなとおり、労災に遭うリスクは職場や職種によって大きく異なる。働き方次第では業務上外の判断も困難だ。自ら保険料を負担しなければならないことと併せ、特別加入のハードルが低いとは言い難い。
連合がフリーランス1000人に実施した調査では、「特別加入制度を利用したいと思う」割合は21.2%だった。「仕事中や通勤途中に休業しなければならないケガや病気を患ったことがある」と答えた200人に限っても、37.5%に留まる。一方で「利用したいと思わない」理由を複数回答で尋ねると、1位は「制度がよくわからない」31.1%、2位は「金銭的な余裕がないから」29.7%だった。
同調査では前年度の年収も聞いているが、300万円未満と答えた者は全体の6割を占める。ただし1週当たりの労働時間数は短く、40時間以上の者は全体の3割に満たない。あえて特別加入に踏み切るフリーランスは、限定的にならざるを得ないだろう。