【助成金の解説】両立支援等助成金不妊治療両立支援コース/岡 佳伸

2024.09.28 【助成金の解説】
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不妊治療による離職を防ぐ

 令和5年度「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」では不妊治療をしている(していた)者の仕事と不妊治療の両立状況について、「両立している(していた)」は55.3%となっています。また、「両立できず仕事を辞めた」は10.9%、「両立できず不妊治療をやめた」は7.8%、「両立できず雇用形態を変えた」は7.4%となっています。治療中・治療経験者の仕事と不妊治療の両立状況を男女別に見ると、男性は「両立している(していた)」が61.8%、女性は51.0%でした。

 両立に困難を感じる理由には、通院回数の多さ、精神面での負担の大きさ、通院と仕事の日程調整の難しさなどがあります。また、治療を受けていることを職場に知られたくない労働者もおり、職場内での不妊治療に対する認識が十分に浸透していないことも課題です。したがって、企業には、不妊治療を受けながら安心して働き続けられる職場環境の整備が求められます。厚生労働省の「両立支援等助成金 不妊治療両立支援コース」は、不妊治療と仕事の両立を支援するための助成金制度です。この助成金は、企業が不妊治療を受ける従業員のために職場環境を整備し、休暇制度や両立支援制度を導入することを目的としています。

支給対象となる事業主

 不妊治療のために利用可能な休暇制度・両立支援制度について、次の①~⑥のいずれか又は複数の制度について、利用しやすい環境整備に取り組み、不妊治療を行う労働者に休暇制度・両立支援制度を利用させた中小企業事業主

①不妊治療のための休暇制度(特定目的・多目的とも可)
②所定外労働制限制度
③時差出勤制度
④短時間勤務制度
⑤フレックスタイム制
⑥テレワーク

支給要件

 次の全ての条件を満たすことが必要です。
(1)不妊治療と仕事の両立のための社内ニーズ調査の実施
(2)不妊治療と仕事との両立の支援に関する方針を示し、労働者に周知させるための措置を講じている中小企業事業主であること
(3)整備した上記①~⑥の制度について、労働協約又は就業規則への規定及び周知
(4)不妊治療を行う労働者の相談に対応し、支援する「両立支援担当者」の選任
(5)「両立支援担当者」が不妊治療を行う労働者のために「不妊治療両立支援プラン」を策定

支給額

 次の要件を満たした場合、A、Bそれぞれが支給されます。

A「環境整備、休暇の取得等」
 支給要件の全てを満たし、最初の労働者が、不妊治療のための休暇制度・両立支援制度を合計5日(回)利用した場合。
 1中小企業事業主 30万円

B「長期休暇の加算」
 上記Aを受給した事業主であって、労働者に不妊治療休暇制度を20日以上連続して取得させ、現職等に復帰させ3か月以上継続勤務させた場合。
 1中小企業事業主 30万円
 1事業主当たり1人まで

受給のポイント

①不妊治療休暇制度は労働基準法上の年次有給休暇とは別の取組である必要があります。有給で無く無給であっても構いません。
②不妊治療休暇制度は不妊治療に特化した休暇制度のみならず、不妊治療を含む多様な目的で利用できる休暇を含むとされています。
③労働基準法上の年次有給休暇の権利が失効した、年次有給休暇を積み立てて不妊治療のために利用できる制度は対象とすることとされています。
④上記②、③に当てはまる多目的休暇や利用目的を限定しない休暇、失効年次有給休暇の積立の場合は、不妊治療のために制度を利用したことが確認できない日数は算定しないものであることとされています。
⑤短時間勤務制度は1日の所定労働時間を1時間以上短縮する制度であり、下記a及びbを満たすこととされています。また、不妊治療のために利用したことが確認できない日数は算定しないものであることともされています。
 a 制度利用期間の時間当たりの基本給等(職務手当及び資格手当等の諸手当、賞与を含む。)の基準が制度利用前より下回っていないこと。
 b 短時間勤務の利用に当たって、正規雇用労働者であった者が、それ以外の雇用形態に変更されていないこと(本人の希望によるものも含む。)
⑥所定外労働の制限制度、時差出勤制度、フレックスタイム制及びテレワーク制度の活用については、不妊治療のために利用したことが確認できない日数は算定しないものであることとされています。
⑦働き方改革推進新支援助成金(労働時間短縮・年休促進コース)との併給も可能です。
様々な制度や仕組みが対象になります。結果として働き方改革に対応した柔軟な休暇制度や勤務時間制度を不妊治療と仕事の両立のために活用した結果が助成対象になります。

おすすめポイント

 データに見る通り不妊治療と仕事の両立は難しく、離職に繋がったり又は不妊治療を取りやめたりする事例が数多く出ています。不妊治療と仕事との両立を実現するために様々な人事制度を取り入れることは、離職率の低下に繋がり人材の確保に繋がります。

受給手続

 本コースを申請しようとする事業主は、支給要件を満たした日の翌日から申請することができ、申請期限は、以下のとおりです。支給申請書に必要な書類を添えて、管轄の労働局雇用環境・均等部(室)へ支給申請してください。
※支給申請書及び添付すべき書類については、厚生労働省ホームページ上の支給要領及び支給申請の手引きをご確認ください。

A 環境整備、休暇の取得等
不妊治療休暇・両立支援制度の利用日(回)が合計して5日(回)を経過する日の翌日から2か月以内

B 長期休暇の加算
不妊治療休暇の取得期間が連続20日以上の場合、当該休暇終了日の翌日から起算して3か月を経過する日の翌日から2か月以内

支給申請までの流れ

厚労省リーフレットより


筆者:岡 佳伸(特定社会保険労務士 社会保険労務士法人岡佳伸事務所代表)

大手人材派遣会社などで人事労務を担当した後に、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険給付業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として活躍。
日経新聞、女性セブン等に取材記事掲載及びNHKあさイチ出演(2020年12月21日)、キャリアコンサルタント

【webサイトはこちら】
https://oka-sr.jp

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