【ひのみやぐら】災害事例は自分に置き換えて

2024.10.10 【ひのみやぐら】
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 安全衛生活動のなかでも災害事例を学ぶことが重要なのはいうまでもない。災害事例を勉強することで、被災パターンなどの原理原則が分かるようになり、自分の経験として生かすことができ、発生の未然防止に役立つ。

 また、労働災害が多発していた高度経済成長期のような時代ならば、身の回りで起きた事故を自分のことのように捉えることもできたかもしれないが、近年は件数そのものが減少し、経験者が少なくなっている。もちろん、好ましい状況ではあるが、万が一災害が起きた場合、事態を最小限にする対処方法に戸惑うこととなる。

 災害事例を学ぶということは、未然防止を図る「攻め」の部分と被害を最小限に抑える「守り」の両面を備えているといってよい。

 一方、他人の失敗を自分のこととして置き換えて考えるというのは案外難しい。被災した経験がないと「私は災害を起こしたことがない」「これまでのやり方でもケガをしたことはないから大丈夫」と軽く考えがちだ。自分が「痛い」経験をすると真剣に考え、再度同じ痛みを受けないように注意するようになるものの、他人の痛みに対しては「自分ならこんなことはしない」「自分には関係ない」と片付けてしまうことがある。

 労働災害は経験するわけにはいかない。痛みは分かち合うのが難しいからこそ、災害事例を学ばせるときは講師役の人はいかに自分に置き換えて考え、どんな対処をすればよいのか真剣に考えさせることが求められる。

 「人の振り見てわが振り直せ」という言葉がある。「他人の行動を見て、良いところは見習い、悪いところは自分の振る舞いを反省し、直すべきところは改めよ」という教えだ。自分の欠点というのは気がつきづらいもの。災害事例の勉強を通して、自分が今まで大丈夫だと思っていた行動は実は危険だったのではないか、不安全行動だと分からずに「つい」していなかったかなど、気がつくようにしたい。

 最後に、過去の災害事例は貴重な教訓でもある。先人が身をもって示してくれた「戒め」を大切に守っていきたい。

2024年10月15日第2460号 掲載
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