【主張】最賃よりまず成長実現を

2024.10.10 【主張】
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 2020年代に全国平均1500円への引上げを……。石破茂内閣総理大臣は就任後の会見で、今後の最低賃金の“目標”についてそう語った。昨年8月、岸田文雄元首相が「2030年代半ばまでに」と掲げた目標に比べ、達成時期を大幅に前倒しした。

 今年度の地域別最低賃金額は、今月末までにすべての都道府県で発効となり、全国加重平均は1055円に達する。20年代のうちに“目標”をクリアするためには、今後改定される機会は最大でも5回しかない。1500円まで引き上げるのだとしたら、年平均7.3%程度の改定が必要になる。今年度の各都道府県の引上げ率は、徳島を除けば4.5~6.6%で、仮にこれが直属上司との目標設定面談だったら、速やかにやり直しを求められるところだろう。

 連合は昨年末、地域別最賃の中期目標を「一般労働者の中央値の6割」に更新し、35年時点で1630~1850円になるとのシミュレーションを示した。十分に驚かされる目標ではあったものの、この場合に求められる年平均の引上げ率はといえば、4.1~5.3%程度。新首相が掲げた“目標”の高さを、改めて思い知らされる。

 地域別最賃は、「地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない」(最低賃金法9条2項)。素直にこの条文を解釈すれば、最賃の引上げが労働者の生活水準を高めるのではなく、生活水準の高まりが最賃の引上げをもたらす――となるだろう。

 近年、原因と結果を逆に捉えていると思われる状況が続いてきたが、石破政権はそうならないことを祈りたい。首相の指示を受けた福岡資麿厚生労働大臣は会見で、「最賃は最賃法に基づき、労働者の生計費、賃金等のデータに基づき公労使三者で構成する最低賃金審議会で議論し、決定するもの。総理からの指示を受け、議論を加速させたい」と話している。目標達成をめざすのであれば、審議会が毎年7%程度の引上げを答申できるような“成長”を実現させるのが先決だ。

令和6年10月14日第3468号2面 掲載
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