【ひのみやぐら】運転者の健康起因事故を防ぐ
国土交通省の調査によると、バス、タクシー、トラックなど事業用自動車の健康起因事故が近年増えているそうだ。健康起因事故とは、脳・心臓疾患や体調不良により、運転操作に問題を起こし、交通事故などを起こしてしまうことをいう。今後、年末繁忙期を迎え、業務量や交通量が増える。事業者は、リスク回避へ対策を図っておきたい。
とくにトラック運転者は、脳・心臓疾患、メタボリックシンドローム、睡眠時無呼吸症候群などのハイリスク者が懸念されている。日常の生活習慣では、まず食習慣の乱れがあるとされる。勤務時間が不規則なため、食事時間や場所が制約されるので、食事を抜いたりコンビニエンスストアの商品で簡単に済ますことがあるという。また、運転中の眠気覚ましで、加糖飲料を摂取する習慣がある人も少なくない。菓子パンや缶コーヒーなどは砂糖の含有量が多く、過剰摂取は肥満や糖尿病の原因となる。
このほかにも、喫煙率の高さや睡眠時間の少なさ、運転席に座っている時間が長いために運動不足なども問題になっている。
健康起因事故は長期間、不規則な生活習慣や悪条件の勤務環境が影響する。全日本トラック協会では、このほど「トラック運送事業者のための健康起因事故防止マニュアル」を改訂した。日ごろから生活習慣や就労条件を良好に保ち、より早い段階で、未然予防を図ることが重要と指摘している。
運転者の健康確保には定期健康診断により体の状態を把握する必要がある。マニュアルでは定期健康診断の受診率を高めるため、労働者の勤務状況を把握して健診日を早期に設定し、早いタイミングで業務シフトを調整するよう求めている。このため、本社・各営業所の管理職などに定期健康診断の目的について理解してもらい協力を得るとした。さらに定期健康診断の受診を就業規則に記載し、理由なく受診をしなかった場合には、必要に応じて懲戒処分の対象になるよう検討するとしている。
運転を仕事としている人は、基本的に一人でいることが多い。管理職は健康診断結果の異常値の放置は命とりになることを周知したい。