【主張】離職防止へ工夫凝らして
令和3年春に卒業した新規大卒就職者の入社3年以内の離職率が、就職氷河期以来の高水準に上ることが、厚労省の集計で分かった。採用した企業側が有効な対策を講じなければ、以後の世代でも高い水準が続く可能性もある。人手不足のなかでせっかく採用できた人材が早期離職につながらないよう、入社者に対するきめ細やかなフォローなど、定着対策を強化したい。
同調査によると、大学新卒者の3年離職率は平成19年卒以降30~32%台で推移してきたが、令和3年卒は、前年比2.6ポイント増の34.9%に達した。35%前後で推移していた平成11~18年以来の高水準となっている。離職率上昇の傾向は、以前から高水準だった宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業・娯楽業などに限らず、鉱業・採石業・砂利採取業を除くすべての産業に及んだ。
一方、企業にしても、ただ手をこまねいてきたわけではない。厚労省の令和5年若年者雇用実態調査によれば、対象事業所の7割が若年正社員の定着に向けて、何らかの対策を実施している。
対策の内容をみると、職場での意思疎通の向上(59.7%)の実施率が最も高く、採用前の詳細な説明・情報提供(58.4%)、本人の能力・適性に合った配置(55.6%)などと続く。前回の平成30年調査と比べて実施率が大きく伸びた取組みに着目すると、労働時間の短縮・有給休暇の積極的な取得奨励(37.8%から15.1ポイント上昇)や、仕事と家庭の両立支援(28.4%から7.9ポイント上昇)、採用前の詳細な説明・情報提供(52.0%から6.4ポイント上昇)などがある。
入社前に就職先に対して抱くイメージが、実際の勤務環境、業務内容と一致するとは限らない。大きなギャップが生じて離職に至る事態を防ぐためにも、採用前の説明・情報提供には細心の注意を払いたい。また早い段階から昇格基準を示して、将来の展望を描きやすくすることも課題になる。入社直後に比べてフォローが薄くなりがちな2年目、3年目の社員にも、教育研修の機会を設けるといった配慮があると良いだろう。