【ひのみやぐら】いつの時代も人間尊重が基本
中災防が提唱するゼロ災運動が昨年50周年を迎えた。今後の運動の発展と拡大のために「ゼロ災害全員参加運動推進要綱」を新たに策定している。
同要綱では、今までと変わりなく「ゼロ災害」「ゼロ疾病」を目指すことを提唱しているが、さらにその先にある「健康づくり」「働きがい」という職場づくり、人づくりに必要な視点に着目したのが特徴だ。皆が健康で生き生きと快適な職場づくりを実現するために、外せない考え方だろう。
さて、ゼロ災運動は人間尊重の基本理念のもとに展開することとしているが、「ゼロ」「先取り」「参加」の3つの原則が軸となっている。「ゼロ」の原則は、単に死亡災害、休業災害、不休災害がなければよいということではなく、根底から労働災害をゼロにしていこうという考えだ。ゼロ災運動の「先取り」は危険要因を災害が発生する前に発見・把握・予測して解決に努めることとしている。「参加」とは、全員が一致協力して、それぞれの立場・持場で、自主的に問題解決行動を実践していくことを指す。このあたりは、中災防が発行している「ゼロ災運動推進者ハンドブック」に詳しい。
ゼロ災運動は、製造業、建設業を中心に産業界に広がり、労働災害防止に大きく貢献してきた。一方、近年は小売業や社会福祉施設など転倒や腰痛などの行動災害や高齢者の労働災害が増えている。今回の要綱策定は、50年の間に産業構造と労働災害の傾向が大きく変化していることから、業種や雇用形態にかかわりなく広く浸透していくことを求めたものだ。
時代によって労働災害への対応方法は変化が必要だが、いかに時間が進もうとも人間の命が何より大切という考えは、普遍であるといえよう。ゼロ災運動の基本理念である「ゼロ」「先取り」「参加」の3つの原則は、この先も変わることなく実践し、皆が明るく元気で働ける職場づくりを追究していきたい。
なお、このほど決定した新マークは3つの原則を表現している。職場では新マークを掲げ、目に入るようにしておく。常に人間尊重の理念を忘れることのないようにしたい。