ともに考える姿勢大切に/社会保険労務士相馬事務所 代表社員 相馬 勝博
40歳代半ばでまったく違う職種から、実務経験なし、顧客なしで開業し、無我夢中で過ごしてきたら、いつの間にか22年になっていた。
この間でとくに印象に残っているのは、平成19年に「消えた年金問題」で世の中が大騒ぎになったときに、社会保険事務所(現在の年金事務所)の窓口に入って対応に当たり、年金の勉強をさせてもらったこととか、「社会保険労務士会労働紛争解決センター山形」の設立にかかわらせてもらい、初代センター長を務めたことなどだろうか。
20年以上の社会保険労務士生活のなかで、近年、雇用を取り巻く環境が大きく変化していると感じる。
1つは、ハラスメント問題が顕在化し、報道などでも大きく取り上げられることが多くなった点である。
当事務所にも、企業からハラスメントに関する相談が多く寄せられるようになった。もちろん、ハラスメント自体はあってはならないことだが、私としては、管理職などが問題化されるのを恐れて萎縮してしまい、必要な注意や指導が疎かになっていないか危惧している。
企業の成長には人材育成が欠かせず、部下の成長を考えて指導することは基本的にはハラスメントには該当しない。そのため、私が企業にハラスメント関係の話をする際には、対象者に配慮しつつ、注意・指導を行うよう伝えている。
また、ここ数年は地域別最低賃金が大幅に引き上げられており、それに伴って人件費の高騰が続いている。
私が住む山形県においても、最低賃金が令和4年に32円、5年に46円、6年に55円引き上げられるなど、それまでの引上げ幅から一変している。
たしかに、国としての全体最適を考えた場合、賃上げは必要とは思う。ただ、私たち社会保険労務士の顧客には中小・零細企業が多く、価格競争力を持たない企業は、労務費の上昇に悲鳴を上げている状況である。相談を受けても抽象的な話しかできず、具体的な解決策を持たないため、歯がゆい思いをしている。
それから、近年は労働関係法令の改正、創設が多くなっていると感じている。もちろん、必要性があっての改正、創設なのだろうが、経営者からの視点としてみた場合、あまりにも規制が多くなり過ぎている。企業各社は対応に苦慮しているのが現状なのではないだろうか。
社会保険労務士として、常にアンテナを張って情報を取得し、企業からの相談に対応し、解決策を見いだせないまでも、一緒に考えていく姿勢が必要なのではと考えている。
社会保険労務士相馬事務所 代表社員 相馬 勝博【山形】
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