ストレス検査の改善必要/大石経営労務事務所 代表 大石 誠
近い将来、労働者50人未満の事業所にもストレスチェックの実施義務が課せられる。労働政策審議会安全衛生分科会の報告書案で方向性が示されている。
このように社員のメンタルを守るための体制が強化されつつあることは大変喜ばしいことである。
とくに小規模企業であると、業務の細分化が難しく、一人ひとりがマルチに対処しなければならないため、その仕事量は、中堅・大企業の比ではない。
ストレスチェックの義務化により「仕事量」においてのストレス要因を客観的にみることができれば、業務量を適正化でき、的確な対処でストレスも軽減されるであろう。
また、近年では発達障害、あるいはその傾向のあるグレーゾーンの社員が抱えるストレスがクローズアップされつつあるが、小規模企業では、そのような特性を持つ社員を見極める余裕がないほど多忙である。
たとえば、発達障害の1つであるADHD(注意欠陥・多動症)の特性を持つ社員は、多くのタスクを同時にこなすことや注意力の維持が難しいと感じる場合がある。
また、自閉スペクトラム障害を持つ人は、あいまいな指示や複雑なコミュニケーションに負担を感じることがあり、これらがストレス要因となることも少なくない。
解決策として、ストレスチェックに「急な予定変更に対する反応」や「他者からの指摘に対する不安感」など、発達障害に特有のストレス要因に関する質問を追加することで、該当する社員のニーズに応じた、より適切な支援が提供できるようになるだろう。
一方、「人間関係」におけるストレスはどうだろうか。小規模企業だと1つの広いスペースにいくつかのセクションを置いている会社もあり、当然、席の移動しかなく、転勤は叶わない。そのため、人間関係によるストレスが軽減されない企業も多く存在する。
このようなケースでは、高ストレス状態の社員が産業医や会社の指定医に相談しても、一時的な気分転換に留まってしまうことが多く、翌日には再び相性の合わない社員と顔を合わせることとなる。心理的安全性も絡め、ストレスチェックの課題点として捉えねばならない。
50人未満事業所への義務化までには十分な準備期間を設けるということだが、その間に多方向からの知見を取り入れ、最適解を導き出すことが肝要となる。ストレスチェックを導入しても、最終結論が社員の離職しかないという結果に至らぬよう十分な議論を重ね、誰もが納得できる制度へと改善していただきたいと期待するところである。
大石経営労務事務所 代表 大石 誠【東京】
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