【書方箋 この本、効キマス JIL-PT・濱口桂一郎選集(2024年下半期)】『仕事と人間(上・下)』『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』『ルポ年金官僚』ほか

2024.12.28 【書評】
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労働新聞で好評連載中の書評欄『書方箋――この本、効キマス』から、2024年の下半期に公開した濱口桂一郎さんご執筆のコラムをまとめてご紹介します。

『仕事と人間(上・下)』 ヤン・ルカセン 著
労働史といえば、産業革命以来のせいぜい200年余りを対象とするものがほとんどだが、本書は副題の通り「70万年のグローバル労働史」を上下巻900頁にわたって描き出す大著だ。ハラリやダイヤモンド、ピンカーらのグローバルヒストリーの労働版といったところだが、改めて人類の歴史は多種多様な労働の歴史だったと痛感する。

ヤン・ルカセン 著、塩原通緒 訳、NHK出版 刊、税込3520円(上下巻ともに)


『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』 三宅 香帆 著
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』というタイトルに、「読書史と労働史でその理由がわかる」というオビの文句を加えれば、これはもうドンピシャリ、『労働新聞』の書評コラムに取り上げないという選択肢はあり得まい。いや実は、著者の三宅香帆さんは一昨年、この書評コラムで毎月面白い本を紹介していた当人でもある。

三宅 香帆 著、集英社 刊、税込1100円


『ルポ年金官僚』 和田 泰明 著
著者は週刊ポストや週刊文春の記者として年金記事を書きまくり、20年前の国民年金保険料未納を巡る騒動のときには、小泉首相の未納情報を関係者から入手して記事にした当人でもある。そういう人がこのタイトルで書いた本とくれば、例によって扇情的な年金ポルノ本の類いだろうと思う人も多いだろう。

和田 泰明 著、東洋経済新報社 刊、税込2420円


『台湾のデモクラシー』 渡辺 将人 著
世界の200近い国には、自由で民主的な国もあれば、専制独裁的な国もある。イギリスのエコノミスト誌が毎年発表している民主主義指数では、第1位のノルウェーから始まって各国の格付けを行っているが、当然のことながら上位には欧米系諸国、下位にはアジア、アフリカ諸国が並ぶ。

渡辺 将人 著、中央公論新社 刊、税込1188円


『女の氏名誕生』 尾脇 秀和 著
過去数十年にわたって夫婦別姓を巡ってさまざまな議論や訴訟が繰り返されている。今年6月には経団連が、選択的夫婦別姓の導入を要望して注目された。

尾脇 秀和 著、ちくま新書 刊、税込1320円


『専制国家史論』 足立 啓二 著
習近平政権の専制的傾向がますます強まり、中国の民主化の希望が遠のくにつれ、この専制的性質が中国という国家にとって本質的なものなのではないかという問題意識が世界的に高まってきている。中国史の専門家がこの課題に挑戦し、壮大な世界史像を練り上げたのが本書だ。

足立 啓二 著、ちくま学芸文庫 刊、税込1320円


JIL-PT 労働政策研究所長 濱口 桂一郎 氏

選者:JIL-PT 労働政策研究所長 濱口 桂一郎(はまぐち けいいちろう)
83年労働省入省。08年に労働政策研究・研修機構へ移り、17年から現職。

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