【書方箋 この本、効キマス スペシャルゲスト選集(2024年下半期②)】『そんな言葉があることを忘れていた』『あの日の風を描く』『ウナギが故郷に帰るとき』ほか
労働新聞で好評連載中の書評欄『書方箋――この本、効キマス』から、2024年10~12月に公開したスペシャルゲストのみなさまにご執筆いただいたコラムをまとめてご紹介します。
『そんな言葉があることを忘れていた』 せきしろ 著/すずめ園(自由律俳人)
「春の泥で汚れたバスに乗れなかった人」、「雪を触りたいのか赤子の手」、「晴天なのに静寂の過疎」 こちらは、せきしろさんの自由律俳句集『そんな言葉があることを忘れていた』の中で、わたしが好きな句だ。
『あの日の風を描く』愛野 史香 著/神楽坂 淳(時代小説家)
女流作家である。「女流」とあえて書くのは、この小説が「絵」の世界だからだ。男性と女性では色彩感覚が少し違うらしい。
『ウナギが故郷に帰るとき』 パトリック・スヴェンソン 著/大島 健夫(詩人)
日本最古の和歌集『万葉集』に、かの大伴家持が詠んだウナギの歌が収録されている。 石麻呂に 吾れ物申す 夏痩せに よしといふ物ぞ 鰻取り食せ 石麻呂(いわまろ)さん、夏痩せに良いというからウナギを食べなさいよ、という、ストレートきわまりない歌である。
『妻に稼がれる夫のジレンマ』 小西 一禎 著/石川 慶子(日本リスクマネジャー&コンサルト協会)
著者は日本の中枢、永田町で働いていた政治記者であったが、米国勤務となった妻に同行するため、2児を連れて「配偶者海外赴任同行休職制度」を取得して主夫となった。現地でのストレスやキャリアへの不安から仲間を集める決意をし、米国滞在中の2018年に「世界に広がる駐夫・主夫友の会」を立ち上げた。
『トニオ・クレエゲル』 トオマス・マン 著/林家 彦三(噺家)
若手の一ハナシカがこのような本を持ち出して、それも推薦し、かつ論評するという事はいささかおかしいとも思われるが、このハナシカは、元々は恥ずかしながらも小説家志望で、大学では曲がりなりにもドイツ文学を専攻し、今現在もわずかながらも文筆業を行っているということは多少の免罪符になるだろうと思う。