【主張】賃上げは近年実績踏まえ
厚生労働省が昨年末に公表した賃金構造基本統計調査の速報(一次集計)によると、一般労働者の平均所定内給与額は33万200円となり、前年結果を3.7%上回った。伸び率が3%を超えるのは1992年以来32年ぶりで、昨春の賃上げの効果をうかがわせる数字を示している。
労働組合の中央組織である連合は、今春の賃上げ要求の目安として、昨年に引き続き定期昇給分などを含めて5%以上とする方針を掲げる。一方で賃上げや価格転嫁における企業規模間格差について問題視し、中小組合の目安については別途、6%以上、1万8000円以上とした。実際、連合による昨年の平均賃金方式の集計では、全体平均の1万5281円に対し、300人未満は約4000円低い1万1358円だった。
ただ、中小企業の組合組織率は高くない。令和6年労働組合基礎調査によれば、民営企業の組合員数767.1万人(規模不明などを除く)のうち、300人未満規模における組合員数は約1割の71.6万人。雇用者全体の約7割を中小の従業者が占めることからすれば、連合の方針の影響力は限られている。
あるいは民営企業全体で15.5%とされる推定組織率(雇用者数に占める労働組合員数)についても、1000人以上で40.0%に上るのに比べ、100~999人規模は9.9%、99人以下に至っては0.7%に過ぎない。連合の集計を組合員数ベースでみても、全体平均の約293万人のうち、300人未満は約36万人となっている。
少なくとも物価上昇の面からして、未だ賃金上昇が心許ないのは間違いない。毎月勤労統計調査によれば、昨年1年間で実質賃金がプラスになったのは夏季賞与の影響が大きい6~7月のみ。最も新しい10月の確報値も前年同月比0.4%のマイナスで、同月発効の地域別最低賃金もめだった影響をみせていない。
賃構調査によれば、1990年代後半から長く30万円前後で推移してきた平均賃金は、過去3年間で約2.3万円上昇した。この間の自社の賃上げ実績も踏まえて、適正な選択をしたい。