【助成金の解説】両立支援等助成金(育児休業等支援コース)/岡 佳伸
育休復帰支援プランにより円滑な職場復帰を支援
育児休業を行ったあとの円滑な職場復帰のために育休復帰支援プランを策定した企業に対しての支援した事業主に対して助成されます。育休取得時と職場復帰時に分けて支給されます。
育休取得時:育休復帰支援プランを作成し、プランに基づき育児休業を取得させた場合に30万円が支給されます。1事業主当たり有期雇用労働者1名、無期雇用労働者1名、合計2名までが対象になります。
職場復帰時:育休取得時の対象労働者の同一育児休業について職場復帰させた場合、30万円が支給されます。1事業主当たり有期雇用労働者1名、無期雇用労働者1名、合計2名までが対象になります。
その他に育児休業等に関する情報公表加算として1回限り2万円が支給されます。自社の育児休業の取得状況(男性の育児休業等取得率、女性の育児休業取得率、男女別の育児休業取得日数)を「両立支援のひろば」サイト上で公表した場合に支給額を加算します。
※出生時両立支援コース(第1種)、育児休業等支援コース、育休中等業務代替支援コース、柔軟な働き方選択制度等支援コースについて、コースごと1回のみ加算
支給対象となるのは中小企業のみです。
<育休復帰支援プランとは>厚生労働省ホームページ転載
「育休復帰支援プラン」とは、中小企業が、自社の従業員の円滑な育休の取得及び育休後の職場復帰を支援するために策定するプランです。プランを策定・実施することで、従業員は安心して育休を取得し復職でき、他方、制度利用者の所属する職場では、快く休業に送り出すことができます。また、プランを実行し、職場のマネジメントが改善されることは、職場全体の業務の効率化につながる可能性があります。
受給のポイント
① 育休取得時と職場復帰時の助成金は実質各企業1名のみ(無期と有期で各1名)。取得時の助成金対象者でないと職場復帰時の助成金は受給できません。復帰しそうな人で申請するのがポイントとなります。
② 育休復帰支援プランは時系列がポイントです。日付に注意して作成することが重要になります。
③ 復職後同じ店長であっても同じ店舗に復帰させなければいけません、例外は本人が望んだときだけとなります(両立支援助成金全コースが原則同じです)。
④ 一般事業主行動計画の策定や一般事業主行動計画策定届の労働局への届出が必要です。一般事業主行動計画の周知には両立支援のひろばが活用できます。
https://ryouritsu.mhlw.go.jp/
⑥ 職場復帰後在宅勤務をしている場合業務日報等により勤務実態(勤務日、始業終業時刻、業務内容)が確認できる場合に限り支給対象になります。
⑦ 職場復帰時は原則原職復帰が前提となります。時短勤務等を選択した場合は育児介護休業法の規定に基づく措置として就業規則、育児介護休業規定等による場合であることが必要になります。
⑧ 令和5年度から生産性要件が廃止されました。新しく情報公表加算が新設されました。
⑨ 令和6年1月から育休中等業務代替支援コースが創設され代替要員手配や手当の支給が別コースに移りました。
⑩ 令和6年4月から柔軟な働き方選択制度等支援コースが創設され職場復帰後支援等が別コースに移りました。
おすすめポイント
女性の育児休業取得率は8割を超えるため、育児休業取得者がいれば、どの事業主でも申請できるのがメリットです(ただし、中小企業のみ)。複雑な仕組みとなりますが育休中等業務代替支援コースや柔軟な働き方選択制度等支援コースとの併給を考えて、育児休業規定の整備を行うことが重要になります。
就業規則規定例
【育休復帰支援プラン】
第XX条
会社は、育児休業の取得を希望する従業員に対して、円滑な育児休業の取得及び職場復帰を支援するために、当該従業員ごとに育児復帰支援プランを作成し、同プランに基づく措置を実施します。
2.育児復帰支援プランに基づく措置には、下記事項を含むものとし、育児休業を取得する従業員との面談により把握したニーズに合わせて定め、これを実施するものとします。
(1)業務の整理・引継ぎに係る支援
(2)育児休業中の職場に関する情報及び資料の提供
【育児短時間(柔軟な短時間勤務)】
第XX条
3歳に満たない子を養育する従業員は、申出ることにより、就業規則に定める所定労働時間について、以下のように変更することができます。
所定労働時間を午前10時から午後5時まで(うち休憩時間は、正午から午後1時までの1時間とする。)の原則6時間とします。ただし、本人の希望により5時間~7時間の間で短時間勤務時の労働時間を指定することが出来ます。休息時間も45分から1時間の間で変更可能です。所定労働日についても月当たり11日から22日まで変更可能です。
【復職後の勤務】
第××条
育児・介護休業期間が終了したときは、原則として、終了した日の翌日から休業直前の部署、職務及び所定労働時間で復帰するものとします。
2.前項にかかわらず、本人の希望による場合および組織の変更等やむを得ない事情がある場合は、復職の時期を遅らせ、または復帰後の部署および職務の変更をおこなうことがあります。ただし、会社都合によって復職の時期を遅らせる場合には、会社は、その期間について休業前の平均賃金の60%の休業手当を支給します。
3.復職の時期が到来したにもかかわらず、正当な理由なく復職しないときは、自己都合退職したものとみなします。
申請スケジュール
筆者:岡 佳伸(特定社会保険労務士 社会保険労務士法人岡佳伸事務所代表)
大手人材派遣会社などで人事労務を担当した後に、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険給付業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として活躍。
日経新聞、女性セブン等に取材記事掲載及びNHKあさイチ出演(2020年12月21日)、キャリアコンサルタント
【webサイトはこちら】
https://oka-sr.jp