【主張】課題多い在宅勤務みなし
厚生労働省の研究会はさきごろまとめた報告書で、テレワーク時に利用できるより柔軟な労働時間管理の方法として、在宅勤務に限定した新たなみなし労働時間制を提示した。制度設計に当たり、実効的な健康確保措置を設け、導入時の集団的合意などを要件とすることを想定している。ただ、在宅勤務で働いた時間について、「労使合意で定めた時間を働いたものとみなす」制度とした場合、みなし時間と実際の労働時間が大きく乖離する恐れがある。労働政策審議会においては、導入の必要性も含めて慎重な議論が求められる。
厚労省の委託調査からテレワーク時の労働時間管理の実態をみると、導入企業の約7割が通常の労働時間制度を適用し、約2割がフレックスタイム制を運用している。
報告書では、フレックス制であっても、実労働時間管理が求められる以上、使用者がそれを根拠に自宅内での就労に対する過度な監視を正当化したり、一時的な家事や育児への対応等のための中抜け時間などの取扱いについて、労使間で紛争が生じたりする懸念があると指摘した。そのため、実効的な健康確保措置を設けたうえで、在宅勤務に限定したみなし労働時間制を創設することが考えられるとした。
その一方で、「みなし制が適用されれば時間外・休日労働の上限規制から事実上外れ、長時間労働の懸念が強まる」、「健康管理の観点から、高度プロフェッショナル制度のように“健康管理時間”を客観的に把握するなど健康確保のための時間把握や、健康状況を確認するための取組みが必要」との意見も紹介している。
仮に業務遂行方法などの裁量の有無を問わず、在宅勤務の実施のみを前提とした制度を創設した場合、それは裁量労働制の要件緩和に過ぎず、長時間労働の懸念は拭えない。報告書は、柔軟な時間管理の方向性として、まずはフレックス制の改善に取り組むべきとも提言している。労政審では、フレックス制改善後の運用実態を把握してから、新たなみなし制の必要性の有無を検討してもらいたい。