【今週の労務書】『労働判例の解釈だけでは見えてこない 弁護士なら知っておくべき、「業務命令権」の行使とその限界』
2025.02.01
【書評】
処分の前に弁明書を
本書は、「使用者は労働者に対して指揮命令する権限がある」という、雇用契約の本質に着目した点に特徴がある。労働者の問題行動への対処方法をまとめている。
一例として、社内ルールを遵守しないうえに、社長の注意に対して「解雇したらいいじゃないですか」などと発言した社員を挙げる。最終的に解雇をする場合であっても、いきなり処分せず、まずは本人に弁明書の提出を命じることを推奨する。紛争化した際、労働者が自身の言動を正当化したりして解雇無効を訴えるケースなどに備えた対応だ。発言を録音していなくても、補助的な証拠になるとも指摘する。
「弁護士なら知っておくべき」と銘打っているが、内容はむしろ企業の実務担当者向け。配置転換の拒絶事案などについても解説しており、参考になる。
(髙井 重憲 著、第一法規 刊、税込3300円、TEL:0120-203-694)
令和7年2月3日第3483号16面 掲載