【主張】「子の介護休業」も意識を
厚生労働省は、「常時介護」に関する判断基準を改める。労働者が介護休業を取得するに当たり、家族が「要介護状態」に該当するかどうかを判断するためのもので、高齢の親などに限らず、自閉スペクトラム症などの障害のある子や、医療的ケアが必要な子も対象になり得ることを明確にする方針だ。有識者研究会が先ごろ、新基準に関する報告書をまとめている。
基準の見直しにより、子の介護に関する労働者からの相談が増える可能性がある。企業は真摯に向き合いたい。
介護休業の対象となる家族には、配偶者や父母だけでなく子や孫も含まれる。ただ、現行の基準が主に高齢者介護を念頭に作成されていることなどから、企業や労働者が、子の介護は対象にならないと誤解するケースもある。基準で示されているチェック項目をみると、確かに「外出すると戻れない」や、「周囲の者が何らかの対応をとらなければならないほどの物忘れがある」など、認知症を想起させる表現が多い。
新基準では、介護休業の対象について、「(常時介護を必要とする)障害児・者や医療的ケア児・者を介護・支援する場合を含む」と明記する。さらに、項目の表現を「外出すると戻れないことや、危険回避ができないことがある」、「周囲の者が何らかの対応をとらなければならないほどの物忘れなど日常生活に支障を来すほどの認知・行動上の課題がある」などと改める。
危険回避ができない状態については、「発達障害を含む精神障害、知的障害などにより、危険の認識に欠けることがある障害児・者が、自発的に危険を回避することができず、見守りを要する状態」と説明。認知・行動上の課題の例として、「急な予定の変更や環境の変化が極端に苦手な障害児・者が、周知のサポートがなければ日常生活に支障を来す状況」を挙げる。
4月施行の改正育児・介護休業法では、労働者が介護に直面する前の早い段階(40歳等)での情報提供を企業に義務付けた。その機会を活用し、障害のある子などの介護・支援にも介護休業を利用できることを周知したい。