【主張】特定技能こそジョブ型に
昨年6月の改正法公布を受け、関係各省で特定技能および育成就労の今後の運用に関する議論が始まった。厚生労働省の有識者懇談会では、育成就労における転籍のルールや監理支援機関の許可基準、さらには特定技能の適正化等も検討課題に挙がっている。
一方で厚労省は昨年末、初めて実施した「外国人雇用実態調査」を公表した(本紙2月17日号8・9面)。標本調査として約3500事業所の回答を集計・復元したもので、就労資格別に賃金や労働時間の実態を明らかにしている。フルタイム勤務の技能実習の平均所定内給与額は16.9万円で、特定技能は19.6万円だった。「即戦力となる人材」を想定するにもかかわらず、特定技能の賃金は首都圏の高卒初任給並みとなっている。
外国人労働者の賃金実態については、これまで賃金構造基本統計調査でも集計されてきた。特定技能の結果は令和2年調査から公表され、フルタイムの所定内は翌3年以降20万円前後で推移している(3年19.5万円、4年20.6万円、5年19.8万円)。いずれの年も平均年齢は28~29歳となっており、これまではサンプルに偏りがあるのでは?と考えることもできた。
ところが今回の実態調査は、外国人雇用状況データベースに登録されている外国人雇用事業所を母集団として設計され、国内全体の状況を示すよう復元した標本調査だ。事業所調査の有効回答率こそ37.4%と心許ないが、どんな事業所が回答を渋るのかを想像すれば、それが平均値を押し下げたとは考えづらい。特定技能の所定内はやはり平均20万円程度で、月23.8時間の時間外・休日労働分と合わせても23.3万円――ということになるのだろう。
特定技能の報酬には、「日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上」(特定技能基準省令1条1項3号)が求められる。現状、1年更新が必要な1号にはパートタイム有期雇用法も適用されるし、ある意味では職務限定のジョブ型雇用に他ならない。超少子高齢社会にとっては労働力確保の最終手段の1つであり、適切な待遇を確保できるルールづくりにも期待したい。