【安全衛生・お薦めの一冊】『労災認定の光と影』

2025.02.26 【書評】
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死因不明でも総合的に判断

 本書は、元厚生労働省職業病認定対策室長である筆者が、労災認定の基本的な原理を解き明かすとともに、歴史的経過をたどりながら「災害主義」の考え方を排除することを提案し、将来の労災認定のあるべき姿までを説いた出色の解説書。

 「災害主義とその検証」「労災認定の在り方」「公正な労災認定」の3部構成で、短期間の業務による出来事が疾病の原因である場合に認定する考え方である「災害主義」の誤りを皮切りに、労災補償制度の基本や労災認定における留意事項などを分かりやすく論述している。

 例えば、業務上の認定では、「条件関係」における「高度の蓋然性」の一例として、炎天下の屋外で働いていた労働者が倒れて死亡した場合を挙げる。死因究明のための解剖が遺族の希望でなされないことがあるが、死因不明であることをもって業務起因性は否定されるものではなく、健康診断結果、既往歴・現病歴、同僚・家族などの証言などから総合的に評価して判断を行うとしている。

(石井 義脩 著・労働新聞社 刊、TEL:03-5926-6888、A5判/184ページ、税込2200円)。

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2025年3月1日第2469号 掲載
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