【今週の労務書】『判例から考える懲戒処分の有効性』
2013.04.22
【書評】
無効事例との比較参考に
懲戒処分とは、使用者が労働者の企業秩序違反行為に対して科す制裁罰のこと。使用者の伝家の宝刀だが、「抜き所の勘に狂いがあれば、始末に負えない」(著者)。本書は、懲戒処分の適正な制度設計と運用を目的に膨大な裁判例を整理し、注釈を加えたものである。
とくに懲戒処分の有効事例と無効事例の比較が参考になる。
例えば懲戒解雇では、勤務後、控室の囲碁の勝負で喧嘩を始め、同僚を足蹴にして負傷させ、5日間欠勤させた事案を無効とした一方で、勤務後に飲酒し、上司を一升瓶で殴打して傷害を負わせ、罰金1万円に処せられた事案は有効とした。有効の理由は、過去2カ月間に酔って2度も暴行事件を起こしたことが斟酌されたとしている。
(河本毅著、経営書院刊、TEL:03-3237-1601、4200円+税)
平成25年4月22日第2918号16面 掲載