【主張】選択肢増すデジタル払い
厚生労働省は3月19日、一昨年4月に解禁された賃金のデジタル払いを行える資金移動業者として、楽天Edy㈱を指定した。PayPay㈱、㈱リクルートMUFGビジネスに次ぐ3社目となる。労働者が資金移動業者の口座(アカウント)で保有できる給与上限額など、サービス内容は各社で異なる。賃金の受取り方法の多様化を通じて労働者の満足度の向上を狙う企業にとっては、制度活用の選択肢がようやく広がってきた。
賃金のデジタル払い制度は、労使協定を締結したうえで個々の労働者から同意を得た場合に、厚労大臣の指定を受けた移動業者の口座への資金移動によって賃金を支払えるようにするもの。移動業者の指定に当たって厚労省は、口座残高上限額を100万円以下にすることや、破綻時に速やかに口座残高全額を弁済できるなどの厳格な要件を設けた。結果として、労働基準法施行規則の改正により制度が創設されてから1年4カ月を経て、昨年8月に初めての指定が行われている。
指定第1号のPayPayは、労働者本人のアカウントで保有できる金額の上限を20万円とし、給与の入金時に上限を超える場合、超過分が本人名義の銀行口座に手数料なしで自動送金される仕組みになっている。2社目に指定を受けたリクルートMUFGビジネスでは、口座の上限額を30万円に設定。デジタル払いの利用を、㈱リクルートが提供する賃金前払いサービスの利用者に限定した。
3社目となる楽天Edyは、アカウントでの受入れ上限を10万円とするなど、ほかの2社よりも少額に設定。親会社である楽天ペイメント㈱の労働者向けに開始したのち、準備が整い次第、一般企業で利用できるようにする。
デジタル払いを導入する際は、複数の移動業者を選択することも認められており、厚労省では今なお移動業者1社の審査を行っているところ。
指定移動業者の間では、不正取引発生時に補償を受けるための手続きもそれぞれ異なる。導入時には、給与振込時の手数料の違いや労働者の意向なども考慮しつつ、条件に合う移動業者を選択したい。