【主張】真価問われる運用2年目
都道府県労働局による「過労死等防止計画指導」の運用が始まってから、1年が経過した。一定期間内に過労死などを複数回発生させた企業の本社を対象に、期間を1年とする全社的な改善計画の作成を求めるとともに、計画に基づく取組みを社内に定着させるための助言・指導を行うものだ。目標達成を報告した企業に対しては、その定着状況を確認する監督・個別指導(定着確認個別指導)を実施することになっている。
過労死などを防ぐには、企業が長時間労働やハラスメントのない職場づくりを行い、その状態を確実に定着させることが欠かせない。そのため、再発防止対策としての計画指導の真価が問われるのは、実際に定着状況の確認が行われる運用開始2年目以降といえるだろう。
厚生労働省は、業務における過重な負荷による脳・心臓疾患や、強い心理的な負荷による精神疾患などの再発防止対策として、過労死などを発生させた事業場への監督指導を重点的に実施してきた。一方、労災請求・支給決定件数はいまだ増加傾向にあり、同一企業の支店など傘下の事業場で繰り返し発生させるケースも少なくなかった。そうしたなか、計画指導は、全社的な再発防止の取組みを丁寧に指導する新たな枠組みとして始まったものだ。
計画指導では、対象企業の本社を管轄する労働局の局長が経営トップを呼び出し、再発防止対策や到達目標を記載した改善計画の作成・提出を指導している。企業は、計画期間の1年間、時間外・休日労働時間の削減やメンタルヘルス対策などの取組みを進める。労働局は取組み開始から6カ月後と1年後に報告を求め、改善状況を確認。目標達成が報告された場合に傘下事業場に対して行う定着確認個別指導において、改善状況に問題がなければ取組みは終了となるが、改善されていなければ3カ月間延長する。
いよいよ計画作成から1年が経過する企業が出始め、定着確認個別指導が行われることになる。労働局においては、改善状況に少しでも疑問が生じた際は、躊躇せず取組み期間を延長してもらいたい。