女性の視点で「非正規」支援/深本労務管理事務所 深本 憲子
みなさんは非正規雇用で働く人たちの間で生じている問題をご存じだろうか。
私が接することの多い非正規雇用の女性たちのほとんどは、正規社員と同じように働いている。しかしその多くは、社会保険である厚生年金や、健康保険に加入していない。国民年金保険料を払わない人も多い。もちろん、その人たちは社会保険に入れないわけでもなければ、国民年金保険料を払えないわけでもない。自分の手取りを多くすることで、「雇止め」になった時に備えているのである。こうした社会保険の未加入は、社会全体に悪循環を生む非常に大きな問題であると私は考えている。では、働くすべての人にとって不安なく安心して働ける労働環境にするにはどうすれば良いのだろうか。
平成24年8月、労働契約法が改正され有期労働契約の適正な運用のためのルールが整備された。特に注目を集めたのが、無期労働契約への転換を義務付けた制度だ。これは、労働期間が通算で5年を超えれば、有期労働契約の労働者の申し出により無期労働契約に転換することができるというものである。
この法改正により、更新拒否の不安が解消されるため、国民年金保険料の納付や社会保険の加入につながると私は考えている。それは社会に良い循環をもたらすのではないだろうか。
ただ、この法改正は良いことばかりではない。なぜなら、通算5年以上というのは、改正法が施行された25年4月1日以降の5年間であるからだ。つまり、30年4月より以前に5年になった場合、非正規労働者は更新拒否をされてしまう可能性がある。また、法的な知識が乏しいために、社会保険に入れる機会を辞退し、無期労働契約の申し出をしないまま労働期間を終了してしまう人も少なくないだろう。
社会保険労務士は専門知識を生かし、法改正だけでは解決できない多くの問題を解消していかなくてはならない。だからこそ私は、すべての人が不安なく働けるよう、女性にしか持てない視点を活かし、非正規労働者の良き理解者、良き支援者として労働者が抱える問題を解決していきたい。企業と労働者がWin-Winとなる理想的な関係を作っていきたいのである。