問題発生の本質追究/名古屋人事オフィス 福井 研吾
ある社長から、社員を辞めさせたい、と相談を受けた。話を聞くと、社員が仕事をしないという。「それは、私の仕事ではない。その仕事をしたら、いくらくれるのか。私はこの会社のために(本気で)働きたくない」。その社員は、無期雇用のパートである。このとき、社労士としてどのようにアドバイスや提案をしていけばいいのだろう。
実際、このようなことは、大なり小なり中小企業では起こっている。社長に即時解雇することの難しさを伝え、過去の判例や法律に基づいて、辞めさせ方を伝授するのも一つの解決策だろう。事実、私も数年前までは、このように対応していた。
しかし、私には、一つの疑問があった。本当にこれでいいのだろうか。多くの会社の支援をしていて思うことは、トラブルの火種が多い会社と、そうでない会社がある。トラブルになった芽を何度摘んでも、次々と問題の火種が起こる会社がある一方で、トラブルとは、全く無縁の会社がある。これは運が良かっただけなのだろうか。
「疑問に思ったら、現場に行け」。これは、京セラの名誉会長の稲盛和夫氏の言葉だ。私は、冒頭のパート社員とトコトン話をした。そして一つの事実にたどりついた。
それは、社長と社員の”はじめの想い”は変わらないということ。ただ、ボタンの掛け違いが起こっているだけなのだと。はじめは、小さなことだった。それはただ、説明が足りなかった。感謝が足りなかった。それだけなのかもしれない。そんな第一ボタンの掛け違いから、ドンドンと感情のもつれが起こり、いつの間にか、社員は、問題社員となっていったのである。これは、その社員だけが悪いのではない。日々の社長の言動や、労務管理そのもののあり方にも問題があるのである。
ちなみに、冒頭のパート社員は、今では正社員となり、管理職となり、その会社で最も大切な戦力となって活躍してくれている。
社労士は、会社を守るのが仕事である。しかしそれは、問題社員を合法的に辞めさせることではない。なぜ、問題が起こっているのかの本質を追究することである。答えは、いつも現場にあるのである。
名古屋人事オフィス 福井 研吾【愛知】
【公式webサイトはこちら】
http://nagoyajinji.com/