調停現場での年金分割制度/村口社会保険労務士事務所 代表 村口 義博
夫婦関係調整調停では、夫婦の離婚とともに年金分割も話し合いになる。多くは専業主婦の第3号被保険者であった妻からなされるが、離婚後の高齢期に受け取れるのは基礎年金のみで、離婚後の年金額受け取りに大きな差があった。
調停では、まず合意するのは標準報酬額の按分割合(増額される側の分割後の持ち分となる割合)であることを理解してもらう。
平成20年4月からは3号分割制度、つまり被扶養配偶者であった期間の標準報酬額を第2号被保険者(多くは夫)の合意を要せず、当事者の一方の請求により2分の1に分割できる制度に改訂された。婚姻期間の保険料納付記録(標準報酬)を当事者間で分割され、離婚後、社会保険庁長官に標準報酬改定請求することにより、対象期間の保険料納付記録が分割されることになる。
3号分割以前の按分割合について当事者の協議が調わない(合意分割できない)場合、家事調停手続き、審判手続きによることになる。
当事者の言い分を調停委員会で解決へあっせんするものであり、調停が成立した場合「調停調書」により明らかにする。
審判手続きとは、調停不成立の場合、家事審判官(裁判官)が按分割合を乙類審判事項として判断する。
年金分割制度を利用するメリットがあるのは、請求者より婚姻期間中に相手方が厚生年金・共済年金を多く支払っている場合のみである。また自らの年金受給資格要件を満たしていることが必要となるし、支給開始年齢までは受給できないことも説明を要する。
妻が原因の不貞の調停でも、妻の対象期間が全て3号被保険者である場合、夫は分割に応じなければならないし、別れた妻が再婚しても分割された年金額は夫に返ってこない。
調停調書の最後に「本調停条項に定めるほか、何らの債権債務のないことを相互に確認する」という清算条項が入るが、年金分割請求は、離婚の翌日から2年以内に別途調停申立てができ、年金は公法上の請求権と考えられ、当事者の債権債務に当たらないと考えられている。ただし「当事者双方は年金分割の請求はしない」という条項を設けた場合には、合意分割に関しては有効となる。
村口社会保険労務士事務所 代表 村口 義博【鳥取】
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