応募者への感謝が第一歩/山本労務管理事務所 山本 晃大
採用は、これから企業を託すに足りる人材を選ぶということであり、その成否は企業の成長に大きな影響を与える。
企業は、採用した社員に膨大なコストをかけ、一人前に育てようと努力する。そもそも、社員が一人前(給与と売上・利益が釣り合うこと)になるのには、2~5年程度かかる。その間、社員の人件費の大部分は将来への投資である。さらに、理想の上司は3分の1の時間を部下の育成に充てるという。上司の人件費も企業の負担である。上司は企業にとって稼ぎ頭であり、売上や利益になるはずの時間を部下の育成のために割いている。この機会損失も忘れてはならない。
そのため、採用時にミスマッチを見抜けず退職に至る場合は企業にとって大きな痛手となる。特に、規模が小さい企業ほど1人の戦力としての比重は大きく、採用が成功か失敗かの影響は大きくなる。しかし、小規模企業はどのような基準・手順で採用するかが決まっていない。そのため運任せとなりがちである。
私の事務所では以下のアドバイスをさせていただいている。①今後の事業展開を踏まえ、どのような人材を求めるかという「期待の人材像」の明確化、②そのような人材を集めやすい求人媒体・内容を検討、③面接シナリオ作成、④十分な面接、⑤適性検査・能力検査の実施、⑥採用決定後の書式類の整備、といった内容である。この手順を踏めば、採用失敗のリスクは相当抑えられる。ちなみに、小規模企業でも使いやすく低価格の適性検査・能力検査ツールはたくさんあるので、ぜひ利用してほしい。
これらの手順は、当事務所での採用の失敗・改善、その繰返しにより徐々に確立してきたものである。その間、多くの方が退職していったが、改善を重ねた結果、ここ4年間で退職者は出ていない。
求人に応募してくれた方に対して感謝の気持ちを忘れず、採用選考には手間を惜しまず全力を尽くす。それによりミスマッチが減る。入ってきた社員を大事にしよう、育てようという気持ちも高まる。結果、定着率が上がり、労務トラブルも減少する。企業の成長もなる。このような循環が多くの企業で生まれるよう今後も努力していきたい。
山本労務管理事務所 山本 晃大【愛知】
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