変化に適応し使命果たす/藤原労務管理事務所 代表 藤原 昭公
6月初め、大学の先生方や経営コンサルタント、社労士が集う勉強会に参加する機会を得た。ある社労士が人手不足に悩む建設業の今後を問題提起した。「若者の建設業離れ」は深刻であり、日本中の建設労働者が不足し、高齢化している。3Kといわれる過酷な就業環境に相応する賃金水準にないこと、就業規則等労働条件が整備されていないこと等に問題がある。国土交通省は事態を重く受け止め、社会保険未適用業者の加入指導を行っている。
しかし、人手不足は建設業だけではない。医療・介護事業、保育等もすでに慢性的な人手不足の状態にある。介護事業では志の高い労働者が入職してもすぐに低賃金等労働環境の未整備に失望し退職していく。労働市場では職種別の雇用ミスマッチが顕著であり、建設業、介護事業を含むサービス業の有効求人倍率が2~3倍であるのに対し、事務的職業は0.3倍と大きな開きがある。高齢化が進み、働く世代の人口が減少していることも人手不足の大きな要因となっている。
こうしたなかで政府は、女性の労働参加の拡大を図るために所得税法上の配偶者控除の見直し等を実施し、女性の労働市場への進出を促進することをめざしている。しかし、企業に対する育児休業制度の徹底指導と保育施設等の拡充を確実なものとしなければ少子化問題解決と矛盾する。女性が安心して子育てしながら働ける労働環境の整備が急務である。
外国人実習生の年限を3年から5年へ延長することも検討されている。実習生を受け入れている企業にとっては安価な労働力の確保として歓迎されるだろうが、実習生制度の本来の趣旨・目的と矛盾している。こうした方針で人手不足を克服できても労働環境が改善しなければ根本的な解決とはならず、かえって正規・非正規の格差を助長することになる。
社労士を取り巻く環境、換言すれば労働環境は大きく変化しようとしている。時代の変化に適応できない者が生き残れないことは歴史が示すとおりである。社労士法第1条の「事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資する」という社労士の使命を全うするためには、こうした時代の変化を俯瞰する力を身に付ける必要がある。
藤原労務管理事務所 代表 藤原 昭公【宮崎】
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