国年基金でリスク低減/香川県社会保険労務士会 顧問 中井 崇規
最近、年金相談会で50歳過ぎの個人自営業を営む方からの相談が増えてきている。相談内容として多いのは、「これまで、定年もなくずっと働けることから老後の生活を意識せず年金のことも全く考えてこなかった。しかし、いずれは働けなくなり、廃業することも意識をするようになったが、老後は国民年金しかないため、何か対策はないだろうか」というものだ。
高齢世帯の生活費は、総務省の家計調査によると月額約27万円。65歳の平均余命が約18年間のため、27万円×12カ月×18年=5832万円と巨額な老後資金が必要になる。今年5月に新聞報道された香川県の1世帯当たりの預貯金残高1600万円強(全国第2位)からみても、この巨額な老後資金を準備できる人は一般家庭ではほとんどいないと思う。長生きは、ある意味では大きなリスクともいえる。この対策としては、いかに資産を増やしていくか、またいかに年金を増やしていくかになる。
年金で注目したいのが、個人事業主など国民年金第1号被保険者だけが上乗せできる年金として加入できる国民年金基金である。会社員、公務員の年金は老齢基礎年金と上乗せの老齢厚生(共済)年金の2階建てだが、国民年金は基礎年金だけになる。そこで、会社員などと同じように2階建てにできるのが国民年金基金だ。1口当たりの年金額が決まっていて自分自身で将来の受取り年金額の設定が行えるなど、プランの立てやすさ、分かりやすさも魅力の1つになっている。
最大の特長は、終身年金が基本であるため長く生きるほど有利になり、長生きのリスクにも対応できること。また、その時々の収入や支出に合わせて加入口数の増減ができる。掛金は、全額が社会保険料控除の対象となり所得税、住民税が軽減される。また、受け取る年金にも公的年金等控除が適用されるので、まさに自営業者にとってはありがたい節税年金になる。
世代間扶養を前提にした賦課方式の国民年金に対し、国民年金基金は加入者自身が自分の年金を積み立て受け取る積立方式なので年齢構成の変化に左右されない制度にもなっている。個人事業主の方は、一度、国民年金基金を検討してはいかがだろうか。
香川県社会保険労務士会 顧問 中井 崇規【香川】
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