能力引き出す職場めざす/ながまつ社労士事務所 永松 勝秀
労働者を酷使し、使い捨てにする企業は、いまやブラック企業と称される。実は、私が社労士になった動機もブラックな職場体験にある。大学を卒業して商社に勤務した後、実家の事業を手伝った。身内の恥なので詳細は差し控えるが、精神面・肉体面ともに辛かった。こうした企業はワンマン経営だろうと思われるが必ずしもそうではない。グレーな例を挙げると、一見健全な企業であっても、休日の振替と代休の違いを現場の管理者レベルがきちんと認識していないことが見受けられる。
職場環境づくりは、経営者の重要な役割である。法律を守るだけでは企業は守れない。法令順守は最低限やるべきことであり、さらに社員全員が自主的に企業活動に参加し、継続してリスクを軽減する取組みを進めることが肝心となる。その際、労働安全衛生マネジメントシステムは仕掛けとして最適だろう。規模が小さく導入に馴染まない企業にはメンタルヘルスケアマネジメントシステムを勧めたい。
平成25年度の総合労働相談のうち、民事上の個別労働紛争相談で最も多いのが「いじめと嫌がらせ」だ。業務による心的負荷を原因として精神障害を発症し、労災認定される件数も年々増え続ける現状にあって職場における心の健康づくりは急務である。
働きやすい職場とは、ただ単に快適さを追求するのではなく、人の能力を可能な限り引き出す環境をいうのではないだろうか。働く人が能力を発揮した先に達成感があり、過程と成果が適正に評価されて満足感が生まれる。それは自己実現につながる。
人のモチベーションは決して賃金だけではない。一人ひとりの能力を引き出す職場は必然的に生産性が向上する。そして、企業の理念と自己実現の方向性が一致したときに帰属意識が強まる。人はそのような企業を自ら進んで去ろうとはしない。
今後ますます深刻になる人手不足。団塊世代の退職は若手への技術の伝承にも影響を及ぼす。人という経営資源の効率を高めることがこれまで以上に求められる。私の事務所でもリーダー育成研修や再入社制度などを積極的に提案していきたい。企業の発展の鍵は「人」が握るのだ。
ながまつ社労士事務所 永松 勝秀【福岡】
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