【人材ビジネス交差点】成果型請負への転換期/㈳全国請負化推進協議会 代表理事 野々垣 勝
2015年に向けた「労働者派遣法改正案」は廃案となったが、秋の臨時国会にて再提出される見通しである。今日、あらゆる業界において”労働力不足”が叫ばれている。これを人材派遣業界への追い風と感じている方もいることだろう。しかし、「人材派遣業界は景気回復とは反比例し、衰退する運命にある」といっても過言ではない。
というのも、その根拠は、人材派遣業界自体が「不況業種」だからである。人材派遣の成長のキーワードは、「派遣先の先行き不透明」と「労働市場の人余り」で、不況業種ゆえ、好景気で成長する業界ではないのである。また、派遣先企業が「先がみえないから派遣」と主張していることからも明らかで、先がみえれば、自ずと「自社雇用」を選択するはずである。しかし、これまで人材派遣業界が労働者を使い捨てにしてきたことで労働者が離れて行き、追い打ちを掛けている。まさに、これが「労働者の派遣離れ」である。
企業は労働力を確保すべく、派遣のみに依存するだけでなく、自社雇用等、あらゆる手法で労働力確保をめざしているのである。多様な求人の中から、労働者があえて「派遣」を選択するのは、全く稀有なことといわざるを得ない。
もうひとつの要因は、派遣先企業を軽視している点にある。仕事がなく、人余り状態の時は企業に日参し、契約締結を願ったにもかかわらず、労働力不足になった途端、派遣先企業がオーダーしても「いれば紹介します」との回答で、手のひらを返した対応をしている。あらゆる業界を見渡しても、これほど無責任な業界はないであろう。こうした人材派遣会社の対応では、派遣先企業の怒りと不信感を買わないわけがない。これが”派遣先企業の派遣離れ”を誘発した要因である。労働者に見捨てられ、派遣先企業にも見捨てられた人材派遣業界には希望を見出せず、将来の大きな成長は期待できないだろう。
一方で、アベノミクスによる雇用規制改革が進められ、労働者についても時間型から成果型への移行をめざしている。ここに”人材派遣の限界”を垣間見るのである。従って、”時間型の「派遣」から成果型の「請負」への転換”は、今、時代の潮流と考えているのである。
筆者:㈳全国請負化推進協議会 代表理事 野々垣 勝