最低派遣料金制度の導入を/㈱エレメンツ 代表取締役社長 福田 浩二
平成26年10月1日から東京都の最低賃金が888円に改定された。厚生労働省は均等待遇・正社員化推進奨励金などの制度を設け、非正規労働者の正社員化を推進しているが、いわゆる「就職氷河期世代」と呼ばれる40代前半の派遣労働者や非正規労働者を取り巻く環境の厳しさは変わっていない。それは労働者の賃金に直接反映されない「雇用形態重視の制度」になっているからである。この奨励金制度でいう「正社員」に転換してフルタイムで働いたところで、今以上に生活が豊かになるわけではない。厚労省における「正社員待遇」の定義は、所得が正社員並みになることをいうわけではないのだ。改正派遣法を巡る議論も、労働者の賃金を大幅にアップさせて生活を豊かにさせようという具体的な議論はあまりされない。
サラリーマンの平均年収は520万円前後といわれている。派遣社員の年収はというと、200万円以下の人が実に77%を占めており、正社員と2倍以上の格差がついているのが現実である。
私はここ数年、派遣と名の付く数多くの一般競争入札案件に参加してきた。そこでみた落札結果のほとんどが、最低賃金ギリギリの、世間相場とかけ離れた落札金額であることに驚いている。場合によっては最低賃金に社会保険や雇用保険などの法定福利費を加えた額よりも安い価格で入札する業者もいる。「予定価格の範囲内ですので決定します」は、決まり文句だが、入札予定価格に最低価格はないのだろうか。
私は常に派遣法に業種別最低派遣料金制度の導入を提言してきた。年間数百億円もの支出金を国から受け取っている独立行政法人であるのなら、率先して派遣労働に対する価値を上げる努力に寄与すべきではなかろうか。
私は中央省庁や独立行政法人が発注する派遣案件の平均落札率は60%前後であると予測している。言い換えればまだ40%の余力(予算)があるのだ。その残りの40%をいかに労働者に反映させるかの工夫をしていただきたい。
正社員並みに稼ぐために、体力の続くかぎり残業する。その現実は雇用形態というコンセントを差し替えたからといって改善されるものではない。
㈱エレメンツ 代表取締役社長 福田 浩二【東京】
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