「ニュー5S」で労災防止へ/小野山労務事務所 小野山 真由美
初めて死亡労災の手続きをしたのが、社会保険労務士になってまだ3年目のときであった。
9月上旬の昼近く、電気店に勤めるAさんは、町内会の依頼で街灯の電球交換作業中にビリッと感電し、高さ約3メートルから落下した。ヘルメットをかぶっておらず、安全ベルトの装着もなかったため、脳挫傷で亡くなった。残された家族は、妊娠5カ月の妻と4歳の息子。私がその事故の連絡を受けたのが、奇しくもRSTトレーナーの研修修了日だった。ほんの一瞬で失われた命、残された遺族の悲しみ、日頃の安全活動の大切さを知るターニングポイントとなった。
その後、職場の安全活動にかかわるようになり、企業と一緒になって、5S活動や危険感受性を高める研修、ヒヤリハット報告書の作成の仕方の習得などに取り組んできた。しかし、工場での対策は一時的に効果はあっても継続が難しく、安全衛生は法律だけでなく人間の生理や心理学、科学や物理の知識も要求されるため、私は少しずつ敬遠していくようになっていた。
しかし4年前に元奈良労働基準局長の金原清之氏と出会ってから、また新たな意欲をもって安全衛生活動を推進している。それは、「ニュー5S」の視点からいま職場で起こっている問題に向き合い解決し、労働災害の防止そして職場の活性化をめざそうとするものである。
従来の5Sは「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」を掲げ、不安全な状態を改善するのに効果を上げてきた。それに加え、人間の行動、つまり不安全な行動に対してどう対策するのかがニュー5Sの視点である。
ニュー5Sとは、スキル・スピード・サイエンス・スピリット・セーフティーの英語の頭文字を取ったものである。スキルは作業に関する知識、技能、資格、能力。スピードは速度や時間、納期等時間に関するもの。サイエンスは科学に裏付けられた理論、証明、記録を指す。スピリットはやる気や健全な向上心であり、最後のセーフティーは安全衛生対策、企業の危機管理対策、法令順守、社内ルール順守である。ニュー5Sの核となるのは、「スピリット」である。職場でスピリットを共有して、二度と前述のような死亡労災が起こらない職場作りをサポートしていきたい。
あすは社労士事務所 小野山 真由美【大阪】
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※タイトルの社名は連載時のものです。