労使が就労ルール順守を/宮島社会保険労務士事務所 所長 宮島 康之
従来、社会労働保険関係の手続事務が事務所業務の主体だったが、近年は労務相談が同じくらいの割合まで増加している。相談内容も変化しており、自分が勤務していた若いころには考えられなかったような相談が、毎日のように舞い込んでくる。
例えば、部下を仕事上のことで注意・指導すれば何でもパワハラだと反論される、会社を休むために心療内科等からうつ病の診断書を出してもらい長期休暇に入るといったケース。さらに、仕事の繁忙状況など関係なく「労働者の権利」とばかり有給休暇を当日の朝に申し出る、退職後に残業代をもらっていないと主張し、自分で計算した時間を基に請求してくるなどのケースがある。会社側の不備が原因で問題になる場合もあるが、基本的に日本の法律は弱い労働者を保護する立場にあるため、まともに彼らに対峙すると会社は不利な状況に追い込まれることが多い。従業員に対して腫れ物にさわるような気持ちで管理している可哀想な経営者・管理者も出る始末である。
加えて近年の法律改正により、原則65歳までの継続雇用、有期雇用者の無期雇用転換制度の創設など、ますます経営者の足かせが強化されている。
会社経営が行き詰まると身ぐるみ剥がされ、再起が困難な状況に追い込まれるようなギリギリの状態で遅くまで働いている多くの中小企業の経営者をみると、このような状況で本当に良いのだろうかと思う。
権利意識の高まりや、終身雇用制度の崩壊、非正規雇用者の増加などの要因により時代背景が全く変わっているが、それに対応できない会社は、今後も労務トラブルに遭うと思われる。
対応としては、契約の意識を強く持つことが必要である。曖昧さを美徳としている日本の風土には反するかもしれないが、会社は雇用契約、就業規則等により明確に就労のルールを作り、相手に理解させる。会社がやることはきちんと行う代わりに、労働者にも義務をきちんと履行することを徹底させる、また、期待レベルの労務を提供してもらうことが必要である。契約を履行できない場合は、何をどうするのかについてあらかじめ決めておく。契約社会では労務に限らずどこでも行われている当たり前のことではないか、そんなことを最近強く感じる。
宮島社会保険労務士事務所 所長 宮島 康之【北海道】
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