組織化でニーズに応える/牧江・田中社会保険労務士法人 所長 田中 靖浩
当事務所は、組織化した社労士事務所づくりを長年推進してきた。当時はこのような事務所は珍しく、ほとんどが先生個人で業務を行っていたようである。税理士事務所などでは当たり前になっている組織化が社労士業界においてはまだまだというのが現状だ。
最近、スタッフを何十人も雇用している組織化された事務所とも接する機会が多くなったが、このような事務所と情報交換をして感じることは、組織化の最大のネックは「人の問題」であるということだ。人事問題をアドバイスしている社労士も、いざ自社に関する「人の問題」ではほとんどの事務所が苦労しているようである。当事務所もスタッフの入れ替わりが多く、なかには退職時にトラブルになることがあった。
社労士という国家資格を取った者であれば、自ら事務所を構えてみたいと思うのは当然であり、実際に社労士事務所勤務後の開業者も多い。ただし、「一人前に育ってほしいが辞めてほしくない」――経営者の考え方とは概ねそういうものなのかもしれない。
そのような難しい状況下でも社労士事務所の組織化は必要であると考えている。企業と顧問契約を結び、労務相談、事務代行など総合的な業務をメーンとした業態ならば、やはり一人の力では限界がある。情報化社会が進むにつれて、人事労務の場面でも様ざまなニーズが増えてきており、メンタルヘルス問題、障害年金、採用支援、教育訓練、助成金など、社労士が携わる業務の種類も増えてきた。ただし、どれも最新の情報と知識が必要とされるため、全てを網羅するのは困難である。
組織化が進めば、より多岐にわたった業務も可能となり、事務所に所属する社労士達の得意分野またはプロフェッショナル性を活かすことで、社労士事務所としての可能性も広がっていくのではないだろうか。ただし、人に依存しすぎると退職されたときのショックが大きい。ともに働きたいと思わせる職場作りや、教育体制を整備することが大事である。
様ざまな形態の社労士事務所があるが、個々の事務所が特性をアピールし、組織化をより強化していくことこそ、社労士がサムライ業をリードしていく道だと信じて日々精進したい。
社会保険労務士法人牧江&パートナーズ 田中 靖浩【兵庫】
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※タイトルの社名は連載時のものです。