心の健康対策を支援/かわばた社会保険労務士事務所 川畑 潤
私は、長野県のほぼ中央に位置する松本市で社会保険労務士事務所を開業している。松本市は上高地の入口であり、北アルプスを望む自然に囲まれた緑多い地域である。都会のストレスを解消するために訪れる観光客も多い。
このようにストレスとは無縁と思われる地域であるが、1年ほど前であろうか、複数の事業所でうつ病の従業員が出たという話が私の耳に入ってきた。それまでの私は、うつ病などの精神疾患は都市部の大会社の特殊な事例であろうと気に留めていなかったため、正直少し驚いた。
そこで、メンタルヘルスの労務管理上の問題点を整理し、県内でセミナーを始めたのが昨年秋である。これまでに県内6カ所、計11回にわたり「メンタルヘルスと労務管理」というテーマでセミナーを行ってきた。そこで相談を受けるなどして、改めて、うつ病が中小企業まで広がっていることに驚いた。
私が相談を受けた事例のうち、最も小さな事業所は従業員が5人だけだった。うつ病で休職していた従業員が、医師の診断書を根拠に復職したところ、その後も頻繁に欠勤するために仕事を任せられないというケースで、典型的な復職失敗パターンである。
その次に小さな事業所は、従業員が12人だった。本人、主治医、事業主が相談して短時間勤務を続けながら治療をしたものの改善がみられず、職場の同僚からも不満が出るようになった。これ以上事業所も本人を支えることができず、事業主が解雇したいと相談してきた事例である。
また、1年に3人がうつ病になり、社長から対策をとるよう指示を受けたが、何から行えば良いか分からず、セミナーに参加した事業所もあった。一方、うつ病は出ていないが、労働基準監督署からメンタルヘルス対策を講じるよう指導を受け参加したという事業所もあった。
幸い私の周りでは、労災申請や事業主が損害賠償責任を問われるような深刻な事例はまだないが、多くの事業所でメンタルヘルスが労務管理上の重要課題になってきていることを痛感している。今後も、セミナーなどを通して、少しでも働く人々と企業の役に立つ活動をしていきたい。
かわばた社会保険労務士事務所 川畑 潤【長野】
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