求められる労働リスク対策/TOMA社会保険労務士法人 代表社員 麻生 武信
当法人に持ち込まれる労働紛争の相談は、ここ数年の間に急増していると感じている。顧問先からはもちろん、当法人のホームページや出版物をみていただいた経営者や人事部の方から、飛び込みのご相談も増えている。
とくによくある相談内容は、「仕事のできない社員を解雇したら訴えられた」、「反抗的な社員がいて対処に困っている」、「残業代の未払いで訴えられた」などであり、すでに弁護士やユニオン(合同労組)が関与し、深刻な段階になっているケースも少なくない。
こうした状況は、厚生労働省が毎年公表している個別労働紛争解決制度の利用状況のデータからも明らかで、平成24年のデータをみると、助言・指導申出件数が過去最多となり、初めて1万件を超える状況である。
紛争の増加している要因は、問題企業(ブラック企業)が増えたことか?私の答えは「NO」である。
私の実感としては、むしろ最近の企業は、法令順守の面ではまだ十分といえないまでも、かつてよりもだいぶ改善されている。
実際の紛争は、マスコミ報道やネットに溢れる情報により、労働者の権利意識が従来になく高まったことによって起こっていると考えるべきだ。日々の相談のなかで、経営者からよく聞かれるのは「もう何年も会社をやっているが、こんなことになるのは初めてだ」という言葉である。
最近は、「過払い金返還請求」ビジネスで活況を呈していた弁護士事務所が、次のマーケットとして「労働紛争」へ参入する動きが顕著になっている。
実際に、弁護士事務所のホームページや、電車の中吊り広告に労働・残業問題解決を掲げているのを数多く目にするようになった。
これまでの中小企業にみられた日本的・家族的な経営感覚では、こうした紛争に対して、まさに無防備な状態といえるだろう。
就業規則などの諸規程の整備をはじめとして、会社の雇用管理を見直し、あらゆる労働リスクを排除しなければ、安心して企業経営ができない時代になったようだ。
TOMA社会保険労務士法人 代表社員 麻生 武信【東京】
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